ニュー輝をお披露目だ。阪神佐藤輝明内野手(22)が、今年初の甲子園で2年目の進化を発揮するマルチ安打を決めた。楽天戦に4番右翼で出場。初回の第1打席に初タイムリーで沸かせるなど2安打1打点をマークした。昨季との大きな違いは激減傾向の三振数。本塁打か三振かのイメージが強かったが、オープン戦打率もチームトップの4割5分5厘とパワープラス確実性が増している。今年の輝はひと味もふた味も違う。

   ◇   ◇   ◇

佐藤輝の折れたバットが空中に舞った。それでも打球は強かった。4番で出場した22年の甲子園初打席は初回2死三塁の先制機。エース則本撃ちで一、二塁間を破った適時打がチーム初得点を呼び込んだ。これぞ頼れる4番の働き。気温10度前後の寒空に球春到来を告げ、8024人のファンを沸き立たせた。

「(もともと)折れてたんですかね? 折れる感じの打撃じゃなかった。バットが古かったです」。あっけらかんと振り返る一打には、2年目の進化が詰まっていた。則本の内角直球、外角変化球を見切り、カウント3-1に持ち込んだ。昨季苦しんだ配球パターンを克服し、高めに浮いた139キロのフォークを初スイングで仕留めた。「いい投手なので打ててよかったです」と笑顔がはじけた。

7回先頭の第3打席は、右腕の高田孝に対しカウント2-2から強振。内角145キロ直球を弾丸ライナーで右翼フェンス上部に直撃させ、一気に三塁まで到達した(記録は二塁打と右翼の失策)。あと少しで本塁打の会心打撃だった。

2年目の進化を示す数字的な根拠も顕著だ。昨季455打席で173三振した三振率は3割8分と高かった。だが今年のオープン戦は3試合12打席で1三振と、わずか8分3厘にとどまる。ボールを見極めて打者有利なカウントを作り、追い込まれても簡単には倒れない。オープン戦打率4割5分5厘もチームトップで、パワーにプラス、確実性が増している。昨季は本塁打か三振のイメージが強かったが、無敵のニュースタイルが確立されつつある。

本人も手応えがあるのだろう。「本当にいつも、『いつも通り』って心掛けています」と平常心。矢野監督は「内容もいいし、見送り方とかスイングしてる形、凡打の形も紙一重。いい状態で来てるし、楽しみやね」とますます期待を膨らませた。

大山との4番争いは依然続くが、「しっかり自分は結果を出して、どこで打っても頑張ります!」と真っすぐに言った。「甲子園は結構好き。(ボールが)見やすいんで、いい感じじゃないですかね」。13日まで7試合が予定される本拠地の地の利も生かし、「シン・サトテル」の進化がまだまだ続く。【中野椋】

▼佐藤輝はオープン戦3試合で12打席に立ち、わずか1三振で三振率(三振数÷打席数)は0割8分3厘。昨年の公式戦ではプロ野球新人最多の173三振を喫し、三振率は3割8分だった。これは90年ブライアント(近鉄)4割3分に次ぎ、2リーグ分立後の規定打席到達者中ワースト2位。なお今春キャンプ中の練習試合と紅白戦では計7試合で24打席で4三振で、三振率1割6分7厘。1試合マルチ三振は1度もない。

▼佐藤輝は今春キャンプ中の紅白戦や練習試合を含めた全実戦で35打数16安打、打率4割5分7厘。昨春の紅白戦&練習試合とオープン戦3試合消化時点では、52打数18安打の打率3割4分6厘で、安定感は大幅に増している。