家族みんなで憧れた夢舞台で、6人きょうだいの末っ子右腕が感謝と成長した姿を見せた。

プロ初先発の巨人ドラフト3位赤星優志投手(22)が、闘病中の父篤志さん(58)と母笑子さんら家族がスタンドから見守る中で6回1失点と好投。初勝利の権利を持って降板したが、救援陣がつかまり、1勝目は持ち越しとなった。チームは逆転負けで開幕3連勝を逃した。

   ◇   ◇   ◇

【ニッカン式スコア】27日の巨人-中日戦詳細スコア

赤星は鉄仮面を貫いた。1回、いきなり1死二塁のピンチを招いたが、表情は変わらない。内心では「経験したことのない緊張感」に襲われながらも、自慢の制球力は乱さなかった。鵜飼、ビシエドを2者連続三振。淡々と帽子を直してベンチに戻る姿に、らしさがにじみでた。5回に1発を浴びたが「打たれた後もしっかり抑えられるように頑張って投げた」と、磨いてきたカーブも駆使して6回を無四球の1失点。初白星はお預けとなったが、プロの第1歩を堂々と刻んだ。

誰よりも待ち望んだ家族に、晴れ姿を届けた。母笑子さん、きょうだい4人とともに、闘病中の父篤志さんが「絶対に行きたい」と車いすでスタンドから見守った。常に冷静で口数が少ない、似たもの同士の父子。2人の記憶に刻まれている原風景は、幼少期のキャッチボールだった。プロのマウンドに立つ息子の成長した姿を見た篤志さんの頬には、喜びの涙が流れた。その光景を笑子さんも目に焼き付けた。

思いは赤星も同じ。家族のおかげでプロ野球選手としての今がある。「ずっと騒がしいというか、笑いが絶えなかった。子どものころから楽しい生活できました」。幼い頃、きょうだいにはよく泣かされた。だから強くなれた。両親は忙しい仕事の合間を縫って、試合の応援に足を運んでくれた。元気だった父、そして母へ、中学卒業時に贈った手紙には「絶対プロ野球選手になるから。死ぬなよ」と書いた。将来、どうしても見せたかった姿だった。

実力で開幕ローテをつかみ、たどり着いた舞台。「家族の支えがあってここまで来られている。プロの世界で投げる姿を見せられたのは、自分としても家族としても、よかったというか、うれしい。初勝利を楽しみにしていると思うので、そこを目指して頑張りたい」。赤星家にとって特別な1日は、まだまだ続く。成長した姿を届けていくことが、何よりの恩返しになる。【小早川宗一郎】

◆赤星優志(あかほし・ゆうじ)1999年(平11)7月2日生まれ、東京都出身。日大鶴ケ丘-日大を経て、21年ドラフト3位で巨人入り。175センチ、78キロ。右投げ右打ち。

▽巨人桑田コーチ(先発赤星について) 初戦ですからね、6回を投げ切って十分だと思いました。勝たせてあげたかったですよね。3日間とも先発は6回を投げて四死球3つなのに対して、中継ぎは12個ですかね。課題である四死球を減らすことがまだ改善されていないので中継ぎ陣に関しては非常に心配しています。