阪神はセ・リーグワースト記録を更新していた開幕からの連敗を9で止め、今季初勝利を飾った。今季初めての甲子園ゲーム。4番佐藤輝明内野手(23)の今季1号2ランがネガティブな空気を吹き飛ばし、初勝利を呼び込んだ。

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阪神佐藤輝の活躍を励みに闘病し、この春から大学で再び野球人生をスタートさせた人がいる。兵庫・仁川学院の4学年後輩・槙原葵人(あおと)さん(18)だ。19年9月に急性骨髄性白血病を患い、翌年2月まで入院。20年8月の兵庫県独自大会に4番遊撃手で出場したが、その直後に再発して闘病が続いていた。

槙原さんのことを聞いた佐藤輝は、阪神からドラフト1位指名されてすぐの20年11月、自宅に見舞った。その後は、昨年2月のキャンプで本塁打を放ったバットも届けた。槙原さんは「病室でドラフト会議を見ていて、阪神がくじを引き当ててびっくりしました。先輩ですが雲の上の存在。いただいたバットは部屋に飾っていて、毎日見ています」と話す。多くの励ましが支えとなったが、その中でも佐藤輝は特別だった。

闘病の影響で、卒業は同い年の仲間より1年遅れたが、地元の宝塚医療大に合格。阪神大学野球リーグ2部西地区に加盟する硬式野球部で再びプレーする。「しんどいけど、野球ができるうれしさが勝ってますね」と笑う。入院中、一緒に筋力トレーニングを手伝ってくれた理学療法士に憧れ、「次は僕がお世話をする番に」と同職を目指す。

この日は甲子園の一塁側指定席で観戦。1回に放った1号2ランをしっかり目に焼き付けた。「すごかった。初めて生で(佐藤輝さんの)本塁打を見ました。やっぱり人気も絶大ですね」と力をもらった。同じ左打者。仁川学院時代、どんなにスイングしても、ロングティーで校舎の窓ガラスを割った佐藤輝のような打球は打てなかった。この日も120メートルのアーチを見て、やっぱりすごいと感じた。佐藤輝にも大学で野球を続けることは伝わっている。巧打の遊撃手として、今度は槙原さんが恩返しの活躍を届ける。【石橋隆雄】