国立大の東北大が昨春のリーグ覇者・東北福祉大を3-1で下し、チーム目標の「Aクラス」入りへ前進した。

先発した最速143キロ右腕・小池侑生(ゆう)投手(4年=前橋)が、9回を8安打1失点の完投。課題だった制球難を克服し、安定感抜群の投球で無四死球の快投。120球を投げきり、リーグ最多優勝を誇る「福祉大打線」をねじ伏せた。東北学院大は7回コールドで宮教大に勝利した。

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小池が一度息を整えた。9回2死三塁。昨春のリーグ王者を相手にリードは2点。アウトはあと1つ。カウント1-1。サインに1度首を振り、うなずいた。右打者の外角にカットボールを投じ、三ゴロ。グラブをはめた左手を力強く握り、やり切った表情で、駆け寄ってきた仲間の輪の中心にいた。

小池 うれしすぎて覚えていません。ずっとふがいない投球が続いていたので、(東北福祉大に)勝てて良かったです

玉砕覚悟が快投劇を呼び込んだ。「自分は失う者が何もない。強気にいった」。立ち上がりから直球を軸に投げ込んだ。3者凡退は3、7回のみ。毎回のように安打を許すも、連打を浴びたのは1失点した5回の1度だけ。要所できっちり打たせて取り、最少失点で切り抜けた。8、9回には走者を三塁に背負ったが、臆することなく自分の投球に徹した。「無四死球だったことが、勝利の要因だった」。

制球難克服が一世一代の好投へとつながった。テークバックした右手の位置を修正。今冬はフォームを固めることに重点を置き、ケガに注意しながらネットに1日100球以上を投げ込む日もあった。普段の練習は朝6時半から9時までの約2時間半。勉強もおろそかにできない。授業(1限目)前の限られた時間で汗を流す。制球にはこだわりを持って取り組んできた。「練習前に何をするのか、明確な意識を持ってからグラウンドに行く。半年間は、ずっと制球を磨いてきた」。努力はうそをつかなかった。

チーム目標に99年以来の「春のAクラス入り」を掲げる。「5大学(仙台大、東北福祉大、宮教大、東北学院大、東北工大)から勝利して、3位に入りたい」。次節は昨秋リーグ王者の仙台大戦。仙台6大学野球を席巻する2大巨頭撃破へ、力強く右腕を振る。【佐藤究】