西武山川穂高内野手(30)が1発打てば負けない。「日本生命セ・パ交流戦」阪神戦の2回に阪神西勇から17号先制ソロ。左中間に深々と運んだ。オープン戦を除き、これまで甲子園以外の11球団の本拠地球場で本塁打をマークしていたが、これで完全制覇。また1つ、スラッガーの勲章が加わった。

今季どすこい弾が飛び出した試合はこれで14戦全勝。チームを3連勝に導き、交流戦首位タイをキープした。

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12球団本拠地コンプリート弾にふさわしい、完璧な一撃だった。そして、やっぱり勝利の祝砲にもなった。2回無死。山川は大きく息を吐き、バットを高く構えた。西勇の低め143キロシュート。タイミングを合わせ、豪快に振り切った。心地よい両手に残る感触、銀傘に快音が反響した。「よかったですね。いい音がしますし、甲子園は」。悠然と歩き出した。広く深い甲子園の左中間も関係なし。白球は西日が差し込むスタンド中段に弾んだ。

序盤の先制弾は、結果的に価値ある決勝弾になった。山川が1発打てば、チームは全勝中。不敗神話は「14」に伸びた。その数字は、いかに勝利に直結するアーチを重ねてきたかの証し。勝利打点も「10」になった。もっとも本人は不敗神話を「最悪です」と言う。変な意識が生まれることを嫌がるが、相手に与える別の効果には期待している。「相手が意識してくれたらいいなと思いますけどね。勝手に意識して甘い球になったり四球を出したり」。

好調の土台は「打席の中で最大集中」。それを生み出す過程がある。1つは試合前練習の後。ノートにペンを走らせる。今日できること、タイミング、呼吸など。それらを記し「頭の準備」として1度整理する。去年と違うのは「ピッチャーのことを書いていない。ピッチャーは誰でもいい」。マウンドに立つ相手は深く考えない。とにかく己に集中する。これが主砲のマインド。右太もも裏肉離れによる14試合の欠場で規定打席は未達だが、本塁打17、打点37の2冠を走る。

通算194発目。これまでパ6球団の本拠地はもちろんだが、セ5球団の本拠地でアーチを放っていた。オープン戦を除き唯一、打てていなかったのが、甲子園だった。そのラストピースも埋めた。「打った後にその話を聞いて思い出した。高校の時に打てたらよかったんですけど」。価値ある勲章も追加されたが、正直、どうでもよかった。「先制できたので、そこがよかった」。チームが勝てたこと-。それが何よりうれしかった。【上田悠太】

▼西武山川が本塁打を打った試合は開幕から14連勝。西武の打者(前身球団を含む)がシーズン1号から本塁打試合に連勝した記録では(1)54年中西太17連勝(2)92年秋山幸二15連勝に次ぎ、秋山にあと1となった。

▼山川は甲子園球場で通算4試合目の初アーチ。これで12球団の全本拠地で本塁打をマークした。

▼山川の殊勲安打11本はパ・リーグトップのソフトバンク柳田に並んだが、11本のうち10本は本塁打で記録。殊勲アーチのシーズン自己記録(18年の14本)に早くも届きそうだ。

○…昨年6月の左膝手術から約1年ぶりに1軍復帰となった若林楽人外野手は貴重な役割を果たした。「2番右翼」で昇格即スタメンし、2安打1得点。第1打席は左前打。8回の第4打席には遊撃内野安打で出塁し、二塁から森の右前打で生還した。昨季は44試合で20盗塁。外野は前進守備も、圧倒的な足で追加点をもたらした。「1軍で活躍するため、頑張ってきた。貢献できて良かった」と話した。

▽西武森(8回に右前適時打) 僅差の試合で追加点が欲しい場面だったので、ランナーをかえせて良かった。