勢いに乗るコイは止まらない! 広島が今季4度目のサヨナラ勝利で阪神を下した。4-4の延長11回2死で宇草孔基外野手(25)がサヨナラ弾となる今季1号ソロを放ち、歓喜のウオーターシャワーを浴びた。負ければわずか1日で4位に転落していた一戦だったが、劇的勝利で3位を死守した。阪神戦は開幕から1分けを挟み9連勝と、その勢いはとどまらない。

   ◇   ◇   ◇

勝利を信じた広島ファンが、宇草の打球の行方を見守った。快音を残し、白球は右中間最深部へ。フェンス直撃か、オーバーフェンスか。わずか数十センチの差で柵越え。勝利を運ぶ放物線が、スタンドに吸い込まれた。

4-4の延長11回2死。すでに2安打していた背番号38が打席に入った。「しっかり打つ準備をして、力まないように」。阪神アルカンタラの初球真っすぐに的を絞り、振り切った。「入るとは思わなかった。信じられないですね」。ナイン総出で迎えられ、勝利の一撃を放ったバットは天に掲げられた。

決勝弾は真芯でとらえた1発。バット全体で最も良いとされる部分だが、宇草にとっては芯で打つことだけが打撃ではない。「バット全体を使って打ちたいんです。先っぽから根っこまで、すべてを使って」。芯から根っこまで、黒いバットすべてが宇草のテリトリーだ。「別に詰まるとかは気にしない。結果としてヒットになればインパクト位置にこだわりはない」。芯でとらえることだけを美学としないが、この日は会心の一撃。「みなさん喜んでくれたのが一番うれしかった」。あふれた笑顔が満足の証明だろう。

これで今季の阪神戦は1分けを挟んで9連勝。10戦負けなしと好相性だ。延長10回には1点を勝ち越されたが、直後の攻撃で坂倉が同点の5号ソロを放っていた。負ければ再び4位転落の危機だった一戦。広島ナインにも、勝利の立役者宇草にもそんな心配は必要なかった。【前山慎治】

○…広島先発の遠藤は5回2失点で降板した。4回から制球が乱れ始め、2-1の5回に3連打で1死満塁とし、一ゴロの間に同点にされた。「走者を出してから、投げ急いでしまった。もう少し冷静になれたら良かった。長いイニングを投げられず悔しい」。5回の攻撃で味方が勝ち越し、勝利投手の権利を持って降板したが、中継ぎが追いつかれ、4勝目は逃げた。

○…広島6番手の松本がプロ初勝利を手にした。延長10回に勝ち越し点を許すも、直後に味方が同点。イニングまたぎとなった11回を無失点に抑えると、その裏にサヨナラ勝利となった。2回1失点で得たプロ初勝利に「うれしいのかうれしくないのか」と複雑な表情。それでもチームの勝利に「自分がやられた分を返してくれて、チームが勝てたのでうれしいですね」と安堵(あんど)した。サヨナラ弾となったウイニングボールは手元に戻り、母親へ贈るという。

【関連記事】広島ニュース一覧