阪神近本光司外野手(27)が“神走塁連発”で勝利の夢を見させた。1点を追う9回先頭で安打出塁すると果敢に二盗を決め、三進後に糸原の遊ゴロで間一髪同点の生還を決めて延長戦に持ち込んだ。陽川の適時失策や糸原の凡走&憤死などもあり、0敗寸前で沈んでいた甲子園を1人で盛り上げた。勝てば2位に浮上できたが、11回にアルカンタラが打たれて5位まで後退。背番号5の大車輪が救いの甲子園ナイトだった。

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同点の11回、6番手アルカンタラが2点を奪われ、甲子園はため息に包まれた。連勝は3でストップ。矢野監督は「勝負にいったら打たれることもあるやん。それは受け止めないと」と責めなかったが、勝てば今季初の2位に浮上できただけに、悔しい敗戦だ。

1点を追う9回には近本の「ウル虎神走塁」連発で、追いつき延長戦に持ち込んだ。28試合連続無失点だった中日守護神R・マルティネス登場で敗色感が強まる中、先頭で中前打。すかさず二盗も決め、一気に無死二塁をつくった。その後三進すると、中日内野陣が前進守備を敷いた。そして糸原が遊撃へゴロを放った瞬間、本塁へ突入。遊撃土田の握り返しがわずかに遅れたが、タイミングは完全にアウト。だが、近本の左足が捕手木下のタッチより先に同点ホームをはいた。

中日ベンチのリクエストも判定は変わらず。審判が再び「セーフ」の判定で両手を広げると、満員4万2582人のスタンドから揺れるような大歓声が起きた。「行けると思ったから行きました。その時の僕の仕事をしただけ」。サラリと振り返ったが「チームが負けたのが一番大きい」と、白星に結びつかなかったことを悔しがった。

振り返れば序盤のミスが痛かった。1点を先制された直後の2回、無死一、三塁で陽川の浅めの右翼への飛球で三塁走者糸原がタッチアップ。しかし無理だと判断したのか、半分の地点で引き返したが戻れずアウト。併殺で好機をつぶした。矢野監督は「正直、難しいプレーだと思う。でもオレらは前にチャレンジしていく野球だから、行ってほしかった」と苦言。許した先制点も左翼陽川がクッションボールを誤った適時失策で、6回1失点と粘った才木を援護できなかった。

巨人が負け、勝てば2位に浮上できたが、反対に5位まで落ちた。2位以下は混戦ながら、首位ヤクルトが負けただけにもったいなかった。借金は4。矢野監督は「毎試合勝とうと思っている。(観客が)たくさん入ってくれているんで、応える野球をしたい」と厳しい表情。悔しさは1日で晴らしたい。【石橋隆雄】

▽阪神矢野監督 (9回近本について)難しいけど、当たり前にやってくれる選手。あのスライディングもよかったし、チカが取ってくれた点。いろいろな点の取り方があって、打って点を取りたいけど簡単じゃない。その意味ではチカがいい攻撃、いい走塁をしてくれた。毎試合勝とうと思っている。やることは変わらない。お客さんがたくさん入ってくれているので、それに応える野球をしたい。

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