全セの強打者たちが、ロッテ佐々木朗希投手(20)の直球を打ち返した。全パの先発右腕に対し、初回に3安打1犠飛で1点を先制。1死走者なしから、巨人アダム・ウォーカー内野手(30)、ヤクルト山田哲人内野手(30)、ヤクルト村上宗隆内野手(22)が3連打を放った。1死満塁からは、佐藤輝明外野手(23)が先制犠飛。ヤクルトにとって、松山は秋季キャンプや主催試合を行ってきたなじみの場所。地元ファンへ、昨季日本一の恩返しにもなった。

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全セ打線が令和の怪物に牙をむいた。直球勝負を続ける佐々木朗を打ち砕いた。まずは1死走者なしからウオーカーが162キロを中前打。続いて山田が158キロを右前打。さらに村上が160キロを中前に運び、塁を埋めた。仕上げは阪神佐藤輝。157キロを左翼への犠飛とし、剛速球をきっちりはじき返して、1点をもぎとった。

さすがの完全試合右腕も直球だけでは、抑えられない。それでも村上は「いやもう、球めちゃめちゃ速くて。あれで変化球投げられたら、もうお手上げだなと思いました」。山田も「今回は真っすぐだけだったけど、シーズンだったら変化球も投げるでしょう。あらためて、すごい投手」と力勝負の中にも、若き右腕の力を感じ取った。

主砲村上は、第1戦前日の25日、両リーグ代表としてイベントに佐々木朗と出席した。「佐々木君と対戦したいなと思っています」と意欲を見せつつも「たぶん打てないんで。思い切って振ります」と、謙遜とも自虐ともとれるコメントを残した。宣言通りの思い切ったスイングで、宣言とは違うクリーンヒット。「欲を言えば、ホームラン打ちたいなという思いもあった。そこは僕のミスショット」と3冠王を視界に入れるスラッガーの見据える先ははるかに高い。

3回1死一塁の第2打席では、オリックス山本の149キロ直球を右前に運んだ。昨年の日本シリーズで7打数1安打4三振と封じられていた東京五輪の同僚右腕から、快音を残したが「真っすぐが来ると分かっていて、ちょっと差し込まれた。まだまだだなと」。球界屈指の右腕2人からの2安打にも満足する様子はない。

松山は村上にとっても、ヤクルトナインにとって思い出深い地。例年、秋季キャンプを行ってきたが、直近2年は新型コロナウイルスなどの影響で実施できていない。初出場の長岡も安打を放ち、ヤクルト勢が“第2の故郷”で躍動。その中心に、村上がいる。【小早川宗一郎】