最後までマウンドを譲らなかった。西武与座海人投手(26)がプロ5年目で初完投、初完封を飾った。テニスが原点にあるサブマリン右腕は7安打、無四球。テンポよく112球で投げきった。西武は12球団トップのチーム防御率2・48だが、これまで唯一、完投がなかった。95試合目での初完投で、フル回転を続けてきた救援陣が休養できたことも大きな価値がある。首位攻防戦2連勝で、ソフトバンクとのゲーム差を1・5に広げた。

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9回の攻撃中、与座はベンチ前でキャッチボールを始めた。その前に辻監督からは「1人で行け」と背中を押された。もちろん、最初からそのつもり。過去最長は8回まで。未知なる最終回のマウンドも、気負いも緊張もない。柳田を空振り三振に仕留めるなど簡単に3人で締めた。「うれしいですし、疲れました」。心地よい疲労に浸った。

最大のピンチは初回1死一、三塁。4番デスパイネへの131キロ直球は外角高めの逆球だったが、力があった。併殺に仕留め、流れに乗った。約100キロのカーブの残像は、130キロ前後の直球を“剛球”に変えた。打者を押し込んだ。

沖縄尚学高にはオーバースローで入学も結果を残せず、歩み始めた変則派の道。サブマリンの資質-。それは、思わぬ形で培われた。父貞央さんはテニスのインストラクター。小学校1年から約3年はテニスも習っていた。下からラケットを振り上げる。その動作がアンダースローに生きていた!? 当時を回想する。

「小さい時の体の使い方は運動神経につながる。テニスの動きが染みついて、横回転の動きが得意になっているんじゃないかと」

高校は背番号1と縁がなかったが、岐阜経大(現岐阜協立大)でサイドからアンダーに腕を下げ、プロの道を切り開いた。1年目は右肘手術など苦労も重ねてきたが、これでチームトップ8勝目となった。

「1試合1人で投げきる」という今季の目標を1つクリアした達成感がある。ただ、何よりうれしかったのは、ブルペンの仲間を休ませられたことだった。「前半戦は助けていただいた。誰も(肩を)作ってなかったと聞いた。それが今日、一番うれしいですね」。首位の最たる要因は投手力。特に救援陣の踏ん張りが大きかったが、疲労の色も見え始めていた。辻監督も「本当に大助かり」と感謝。中継ぎは試合で投げなくとも肩を作る日も多い。連戦続きの夏。救援陣に休養を作れた意味は大きい。混戦の優勝争いを制する上でも、価値ある初完投、初完封だった。【上田悠太】

▽西武辻監督(前日29日に首位に立ち、2位ソフトバンクに連勝)「野手もよく6点を取ってくれた。打たせて取る与座はリズムに乗れた。記事できるじゃない。初完投、初完封で。1日天下じゃない。ちょっと余裕あったから、そういうことも考えていた(笑い)」

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