西武中村剛也内野手(38)は、なぜ450本ものアーチを積み重ねられたのか? 栗山巧外野手(38)が、同期入団の目で分析。連続写真で打撃フォームをひもとくとともに、近年のおかわり秘話? も明かしました。

「完璧」のひと言じゃないですか。この打撃フォームを見て、改善点を指摘できる人なんていないでしょうね。ホームランにしているんだから、よく見えて当たり前かもしれませんが、僕の知っている「おかわり」そのもののバッティングだと思います。

よ~く見ると全身が器用なんですよね。まず下半身の使い方が天才的。(1)(2)から(3)(4)に移行するときの軸足の右足を見てください。膝頭を外側に割るように使いながら、下半身を投手側にスライドさせているでしょ? 言葉にすると難しいんですが、こうやって使えると、パワーをためながら、飛ばす方向に勢いをつけられる。

僕はおかわりと同じ右投げですが左打ち。なので、逆に右足が前なんです。だから軸足の左足をこういうふうに器用に使えない。うらやましいですね。

いい右打者は、軸の右足をうまいこと使うんですが、おかわりは左足も同じように器用に使えるんです。インパクト後の(9)以降の左足を見てください。太ももの内側にしっかり“壁”ができているでしょう。

特にすごいのは(12)の左足。この連続写真はレフトへのホームラン。右打者が引っ張ってホームランにするときって、インパクト後の左足が開いていくことが多い。おそらく右半身で打つから、打った後に少し体を開かして振らないと、バットをこねてしまうからなんでしょう。でも、おかわりの左足はインパクト後にも開いていかない。だから最後まで力をロスしない。右打者でありながら、右投げ左打ちの長距離砲のような前側の足での“壁”の作り方をしているんですよ。

上半身もよ~く見るとすごい。ボールを捉える直前の(8)では、少しヘッドが落ちすぎているように感じるんですよね。でも(8)→インパクトの(9)→インパクト後の(10)まで、ヘッドの通ったところを線で結んでみてください。少しアッパー軌道で右上がりの線になりますが、(8)でのヘッドの落ち方から想像すると、もっとアッパーの軌道になりそうじゃないですか? でも(10)では、まだバットのヘッドが下を向いています。だからアッパーになりすぎない。

インパクト軌道は若干アッパー気味なのに、リストターンせずにヘッドだけを投手方向に出していけている。この技術は本当にすごい。だから打球にスピンをかけて飛ばせる。これがアッパーすぎの軌道になれば“あおり打ち”になって、打球にドライブがかかってしまうと思います。

この打撃フォームに関して言えば、完璧すぎ。ただ、完璧すぎるから疑問もありますよね。打った球は131キロのスライダー。変化球を打ったなら、もう少し崩れる部分が出てくると思うんですよ。これが速い真っすぐだったらどうなるか? 変化球を狙っていたのでは? 興味を引かれるところですね。

打撃についてはすごくよく考えているんですよ。自分からはペラペラとしゃべらないけど、こっちから意見を言ったり質問すると、ようしゃべる(笑い)。よくバッティングの話はしています。

最近、あいつの行動をまねしようと思っているんです。“超”のつくほどマイペースで周りを全く気にしない(笑い)。いつも自分のペースで、必要以上の練習はしないし、休むときはとことん休む。練習も、昔から自分が納得するメニューだけを集中してやるんです。ベテランになると体に無理がきかなくなってくる。あいつのマイペースを見習わなくちゃいけないと思っているんです(笑い)。

普段の生活も結構、考えていると思いますよ。キャンプや遠征中に食事をするとき、最初にサラダを多めに食ってるんです。10年ぐらい前からじゃないかな。最近は「これを食うと腹にもたれる」とか言って、脂っこいものを減らしたり、バランスよくいろいろなもんを食っているんです。

プロ入りしてからずっと同じチームの同い年。選手のタイプも性格も違うけど、ずっと見てきてるから分かるんです。本当にすごい選手だと思います。これからもお互いに頑張っていこうな!(西武外野手)