1カ月遅れで、ようやく届けられた。19日の東京ドーム。阪神戦前の時間に、後輩たちの思いがこもった色紙を、先輩である巨人の守護神・大勢投手(23)へ渡すことができた。

7月11日、私は大勢の地元である兵庫・多可町にいた。ファン投票で選出されたオールスターゲームを前に、大勢の母校・八千代中の生徒たちに会いに行った。連載「夢と故郷~大勢と僕~」でも書いたように、後輩たちから応援メッセージとそれぞれの夢を記した色紙を預かった。

球宴前の7月22日からの中日3連戦(バンテリンドーム)で大勢に届けるはず…だった。しかし直前に大勢が新型コロナウイルスの陽性判定を受けたことが発覚。チーム内にも感染者が続出し、同戦は延期となった。球宴の辞退も決定し、行き場を失った生徒たちの色紙が手元に残った。

「何て書けばいいですか?」「横書きか縦書きかどっちがいいですか?」「インスタグラムのストーリーズに載せてくれるかな…(笑い)」。尊敬する先輩に見られても恥ずかしくないよう、新聞に載っても恥ずかしくないよう、丁寧に下書きを繰り返した。そんな生徒たちの姿が記憶にあるからこそ、私が持っていても、直接届けないと意味が無いと常に思っていた。

感染対策のため、自らの手で直接届けることはできなかったが、球団の粋な計らいで、隠善広報に代理で届けてもらった。机に並べられた9枚の色紙をじっくりと見つめた大勢は「うれしいです。自分も頑張らないとと思います。それぞれ夢に向かって頑張って欲しい」と後輩たちの贈り物を大事に受け取ってくれたそうだ。常に「ファンを魅了したい」と語る故郷とファンを大切にする温かき23歳。笑顔で写った色紙との写真に、喜んでいる生徒たちの顔が目に浮かぶ。【小早川宗一郎】