捕手という重責を負うからこそ、その記録はより価値を帯びる。西武森友哉捕手(27)が通算100号本塁打を放ち、チームを8月23日以来の単独首位に押し上げた。4回。日本ハム上沢から6号ソロを右中間席に運んだ。リードも光り、1失点に抑えて自らの1発と勝利を直結させた。スラッガーではないと自負するが、史上306人目の節目に27歳22日で到達。高卒捕手では野村、城島に次ぐ3番目、大卒、社会人を含めても6番目の若さとなった。

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新たな勲章だった。両手に残る完璧な感触をかみしめ、森は走りだした。1-1と同点の4回。上沢の低めの143キロフォークをすくった。12試合ぶりの1発は貴重な勝ち越し弾。そして通算100号だった。

「プロ入る前から打てる捕手を目指してやっていた。阿部さん(現巨人コーチ)みたいな捕手になりたいと、ずっと練習もしていた。自分の役割は本塁打ではないと思っているけど、本塁打は最強やと思っている。一振りで1点入るし、走者がいれば2、3、4点と入る。そこまで本塁打にこだわりはないけど、打てるに越したことはない」

ダイヤモンド1周すると、同じ13年ドラフトで入団した山川から記念ボードを渡された。節目をかみしめるも、頭はマスクをかぶることに切り替わっていた。

通算904試合目の出場。リーグ優勝した19年はMVPを獲得した。どんなに経験を重ねても、試合に出れば、心の糸がほぐれることはない。捕手という場所に誇りがある。1球の選択を誤れば、勝敗も左右する重責を担う。真顔で言う。

「(緊張は)毎日、毎イニングしてますよ。(入団から)ずっとしてます」

今年のオールスターでもロッテ松川に尋ねた。

「緊張せえへんの?」

高卒1年目の捕手に聞くほど、緊張とはずっと森の中に同居するものだった。「めっちゃ緊張していますよ」という松川の答えに「緊張が試合の中で感じられない」と素直に驚いた。今は無理にリラックスは心がけない。緊張と向き合いながら、集中する糧にする。

その頭をフル回転させる配球も光っていた。初回1死満塁、上川畑にはインハイで三邪飛を打たせて併殺に。3回無死満塁は近藤を狙い通り二ゴロ併殺で最少失点にしのいだ。中盤は「基本的に真っすぐを待って振りに来ている」と察し、変化球主体で乗り切った。

扇の要。緊張を切り離せない役割だからこそ価値は際立つ。ただ森が100号より「すごいうれしかった」のは、この試合を「1失点で抑えられた」こと。その言葉はうそでない。「打てる捕手」の象徴的存在だが「打てるだけの捕手」になるつもりはない。打って守れて一流。森友哉の目指す野球道だ。【上田悠太】

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