日本ハム伊藤大海投手(25)が新人だった昨季に続く10勝目を挙げた。気持ちを前面に押し出しながら、楽しむことを忘れない原点回帰の投球で6回1失点と好投。8月31日の誕生日に北海道・鹿部町にいる両親から受けたメッセージも力に変えてつかんだ1カ月ぶりの白星で、球団34年ぶりとなるルーキーイヤーから2年連続2桁勝利の快挙を達成した。

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1カ月ぶりに“大海スマイル”が輝いた。「ずっと意識はしていたんですけど、なんとか出来てホッとしています」。8月2日ソフトバンク戦(旭川)以来の勝利で、また球団の歴史に名を刻んだ。新人から2年連続2桁勝利は87、88年西崎以来、34年ぶりの快挙。3度の足踏みを経て挑んだこの日は「最近、自分の良さである新しいことにチャレンジすることを忘れていたので、今日は思い出して」と、初回の初球から“新球”を投じた。

楽天の1番西川に対して投げた1球目はカットボールだった。前から投げている球種だが、前回登板からの1週間で新たな挑戦をしたボールだった。「カットボールが最近良くなくて、ダルビッシュさんのユーチューブを見て改良して、使えた」。尊敬する大先輩がアップしていた動画で勉強し、キャッチボールやブルペンで練習した。「元々の持ち方とかも変えて。動画のまんまで投げてました」と“ぶっつけ本番”ながら好投のスパイスとなった。

そんな大胆なチャレンジを後押ししてくれたのが、両親だった。25歳の誕生日を迎えた8月31日。感謝の思いを伝えると、母からは「『楽しんでる姿だけを楽しみに頑張っているよ』と」。タコつぼ漁師の父清光さんからは「何か言いたそうにトンボが作業場に入ってきたことを教えてくれて『トンボのように頑張りなさい』っていう。『前だけ見てなさい』と」。

決して後退せず、前だけにしか飛ばない“勝ち虫”と呼ばれるトンボのように、この日の伊藤は楽しみながら「前だけを見て投げました」と、両親からのメッセージ通りの姿で投げて、勝ち運も取り戻した。

新庄監督は「彼にとっては10勝を目標にしていないと思う。この先、最多勝を取れる位置まで来ていると思う」と、さらなる勝利の積み上げとタイトル奪取も期待された。まずはキャリアハイとなる11勝目へ向けて伊藤は「超えていかなきゃいけないと思う」。そのためにも「次のマウンドも楽しんでトンボのように頑張ります」。不退転の決意を力強かった。【木下大輔】

▽日本ハム松本剛(2安打2打点。打率3割5分4厘で首位打者キープ) (伊藤)大海の10勝がかかっている試合だったので、何としても勝ちたいという一心でした。

▽日本ハム万波(5回にチームトップの決勝14号ソロ) いろんな球種追いかけるのは難しいピッチャー(岸)なので、最後まで真っすぐだけは変なやられ方したくないなと思っていた。それが最高の形になってくれたので良かった。

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