東都大学野球の東洋大を6度の日本一に導いた高橋昭雄前監督が7日、前橋市内の病院で亡くなった。74歳だった。

1948年(昭23)6月8日、埼玉県に生まれ、大宮工から東洋大へ進学。現役時代は捕手として活躍し、4年時には副将を務めた。日産自動車入りした71年秋に母校の監督の誘いを受け、翌72年2月に就任。23歳の若さから、戦国東都を戦い抜いてきた。

76年秋に初優勝し、07年春からリーグ5連覇を達成。08年には全日本大学選手権と明治神宮大会を制して「大学4冠」を成し遂げ黄金期を築いた一方で、12年秋には2部降格も経験した。それでも、17年には東都1部で春秋連覇。これを置きみやげに、46年間の監督生活に終止符を打った。リーグ歴代最多通算542勝の金字塔を打ち立て、日本一は6度成し遂げた。

40歳前後で十二指腸潰瘍を患い、60代後半になって腎臓が悪化。体調を崩しながらもチームを率い続け、17年は週に3日の通院で人工透析を行いながら指揮をとっていた。

多くのプロ野球選手を輩出し、教え子は979人に上る。元広島監督の達川光男氏を始め、元阪神の桧山進次郎氏や今岡真訪氏、元巨人の清水隆行氏。現役選手では、ロッテ鈴木大地、ヤクルト原樹理、DeNA上茶谷大河らがいる。監督退任後も、群馬県の自宅から教え子がプレーする姿をテレビで見守っていた。東洋大野球部の歴史をつくり上げた名将が、この世を去った。

◆高橋昭雄監督の主な教え子(所属は主な球団) 松沼博久、松沼雅之(以上西武)達川光男(広島)桧山進次郎、今岡誠、福原忍(以上阪神)清水隆行(巨人)大場翔太(ソフトバンク)ら。現役では原樹理(ヤクルト)上茶谷大河(DeNA)梅津晃大、大野奨太(以上中日)甲斐野央(ソフトバンク)中川圭太(オリックス)鈴木大地(楽天)らがいる。

▽東洋大OBで元阪神の桧山進次郎氏(日刊スポーツ評論家) 先週、電話で直接話したのが最後になりました。そのときは意識がはっきりしていたので、ぼくとしても少しほっとしたのですが、訃報の知らせを受けて残念でなりません。常に学生野球とは? を追求された監督だったと思います。野球も、私生活も生意気な態度は許さなかった。社会に出ても通用するように「一生懸命はだれでもする。一生懸命に努力をするんだ」と厳しく教えられました。今でも何か悩んだら「監督だったらどう対処するだろうか」と考えることにしています。まさに人生の師でした。

▽東洋大OBで元阪神、ロッテ・今岡真訪氏(日刊スポーツ評論家) 高橋監督が推薦してくれたおかげで1996年アトランタ五輪に出場することができたし、銀メダルを獲れたのは最高の思い出です。面と向かってほめられたことはありません。でも本人がいないところでほめてくれる愛情を感じた監督でした。キャプテンだった大学4年のときに監督室に呼ばれて「どうやったら勝てるだろうか?」と問われたときのことです。ぼくが「バントとかを絡めて…」と答えると「お前が打てば勝てるんだ!」と厳しく激励されたことが思い出されます。常にクリーンアップが打って勝つ“王道野球”をたたき込まれました。今はただただ残念です。