阪神ジェフリー・マルテ内野手(31)が残留猛アピールのV撃だ。1-1の6回の代打で中日柳から2点適時打。故障がちな今季は出場27試合で来季去就が微妙な中、“4度目の1軍”で存在感を発揮中だ。メル・ロハス・ジュニア外野手(32)はダメ押しの9号ラン、カイル・ケラー投手(29)は1回完全投球で来日初勝利。助っ人トリオが来季もタテジマの心意気で、Aクラスを争う4位広島とのゲーム差を2に広げた。

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鋭い打球が三遊間を抜けた。代打マルテが同点の6回1死満塁で登場し、柳から決勝の2点タイムリー。喜びを爆発させるベンチのナインを一塁ベース上からうれしそうに眺めた。「すごく集中していた」。代打での適時打は意外にも、来日4年目、通算7打席目で初めて。粘って7球目の甘いスライダーを仕留めた。矢野監督も「何といってもマルテがいいところで打ってくれた。自信を持って送り出した」とたたえた。

苦しい1年を戦っている。昨季は自己最多の128試合で22本塁打。今季も「3番一塁」の期待が大きかった。だが、開幕7試合目で右足を痛めて離脱。開幕からの歴史的低迷の要因にもなった。5月に復帰したが、再び右足を痛めて出場11試合で離脱。さらに7月13日巨人戦で1軍復帰し、2安打2打点をマークしたが、その1試合で、また右足が悲鳴をあげた。

もはやこれまでか。3度の故障で首脳陣も再昇格に慎重だったが、マルテもネバーギブアップで状態を整えた。8月30日に再昇格。9月は6戦中4試合スタメンで、打率3割7分5厘、3打点と好調だ。それでも出場27試合で打率2割4分1厘、1本塁打、8打点と厳しい成績が並ぶ。来季の契約更新が微妙な中、昨季のような勝負強さ発揮で残留を必死にアピールした。

同じドミニカ共和国出身の英雄にパワーをもらった。今季限りでの引退を表明しているカージナルスのアルバート・プホルス内野手(42)が、11日に通算697号本塁打を放ち、歴代単独4位に浮上。マルテはこの日、その快挙を自身のインスタグラムのストーリーにアップ。「あなたを誇りに思います」と思いを込めた。残り10試合。自身は思う成績を残せていないが、プホルスのように打ちまくり、一世風靡(ふうび)した「ラパンパラ」連発でAクラス確保に貢献したい。

チームは中日に連勝し、4位広島との差を2ゲームに離した。13日からはその広島と甲子園で2連戦。連勝で4ゲーム差に広げ、クライマックスシリーズ出場の3位を決定的にしたい。マルテもお立ち台で誓った。「CSに行って日本一を目指して精いっぱい頑張ります」。竜退治のお次は鯉料理。打棒爆発に、乞うご期待だ。【石橋隆雄】

〇…決勝打を放った阪神マルテは、甲子園の虎党に別れを告げた中日福留に向け、お立ち台から感謝を伝えた。「すばらしい同僚でありましたし、私たち外国人選手にもすごくアドバイスをくれたりとか、モチベーションをあげてくれることをしてくれたりとか、本当に尊敬できる方。さらなる成功を願っています」。来日1年目の19年から2年間一緒にプレー。学ぶことも多かったようだ。

○…ロハスもダメ押し2ランで残留をアピールした。3点リードの8回裏1死一塁で代打登場し、9号右越え2ランで試合を決定づけた。8月は月間打率3割2分8厘と状態を上げたが、9月は試合前時点で17打数1安打と苦しんでいた。お立ち台では日本語で「ヨンタイイチ、ホームラン、ネロタウェン(4対1、ホームラン、狙ってん?)」と表情を緩ませた。

○…佐藤輝が2試合連続タイムリーとなるダメ押しの左前打を放った。2点リードの7回、1死一、二塁。3番手祖父江の甘く入った149キロ直球を逆方向へはじき返した。一塁上ではベンチに向かって両手を斜め上に突き上げる新ポーズを披露。「ピンキーガッツ! 熊谷さんが試合前の声出して『やりましょう』と」。井上ヘッドが現役時代に行っていたポーズをまねたものだという。6回にも左前打を放ち、マルテの決勝タイムリーにつなげた。5試合ぶりのマルチ安打で勝利に貢献した。

○…中野が今季14度目の猛打賞で快勝に一役買った。初回は先頭で左前に運び、大山の先制打を演出。8回は右前に運び、ロハスのダメ押し2ランを呼ぶなど2得点マークした。「最近、自分でもあまり分からないくらいの打撃の悪さとかがあった。今日の試合から思い切ってトップの位置をちょっと上げるというのを試したら、バットの出が良くなった。いい修正ができた」とにっこりだった。

○…4番大山は同点打でナインの士気を高めた。1点を追う1回裏1死一、二塁、柳の内角直球を押し返して右前に落とした。「才木が頑張って投げてくれていましたし、なんとか早い段階で追いつきたいと思っていました。追い込まれていましたが、しっかりと振り切ることができましたし、(中野)拓夢もよく走ってくれました」。7回にも中前打から4点目のホームイン。7戦ぶりのマルチ安打で勝利に貢献した。

○…先発の才木は5回1失点と好投したが、5勝目はお預けになった。初回にビシエドに先制適時打を許したが、2回以降は粘りの投球で追加点を許さず役割を果たした。「調子はよくなかったけど、野手の方々にも守っていただいて、最少失点で乗り切ることができた」とバックに感謝。5回94球での交代に矢野監督は「球数だけでなく、球の力と制球で、代え時かなと」と説明した。

○…セットアッパーの湯浅がリーグトップの40ホールドポイントに到達した。8回から登板し、先頭岡林にヒットを許したが後続を断った。「KK(ケラー)の初勝利をアシストできて良かったです」と振り返った。視察した侍の栗山監督も以前から熱視線を送っており「(日の丸は)自分の中での1つの目標でもあるので、とにかく目の前の試合を全力で抑えることを積み重ねていきます」と力を込めた。

▼阪神は12日に今季優勝が消滅する可能性があったが、ヤクルト●阪神○で回避した。しかし、最短で今日13日にも今季優勝の可能性が消滅する。条件はヤクルト○阪神●の場合のみ。

▼阪神は今季中日戦を13勝12敗で終えて、3年連続のカード勝ち越しを決めた。今季は巨人戦でも勝ち越しを決めている。一方、DeNA戦と広島戦はすでに負け越しが決まっている。ヤクルト戦は9勝12敗でまだ決まっていない。

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