エースのプライドを95球に込めた。巨人菅野智之投手(32)が、7回5安打1失点7奪三振で9勝目をつかんだ。1回1死三塁、佐野に適時打を浴びて6球で先制されたが、調子の良かったスライダーを駆使。「経験でカバーしてます」と今季初の中5日で臨んだマウンドで、四死球なしの好投。逆転勝ちを呼び込み、チームを3位阪神、広島とゲーム差なしに導いた。

「エースとは」「プロ野球選手とは」を教わった西武内海がこの日、引退登板した。「入団してから目標にしてやってきましたし、今でも変わらない。理想のエース像というか(理想の)野球選手」と憧れ続けた。内海が巨人を離れた19年からは、ロッカーを内海が使っていた場所に変えた。受け継いだ「UTSUMI」のネームプレートも、いまだに隣に並んでいる。

勝っても負けても、何歳になっても一番早く球場に来て外野を走っていた姿が忘れられない。32歳になり、すごさが身に染みて分かる。「続けることはどれだけ難しいかを教えてもらった気がします。残してくれたものはたくさんあるので、僕も引き継いでいるつもりではいる。『いいものを残していけるように』と連絡させてもらいました」。しっかり伝えたいから、連絡が殺到する引退発表直後ではなく、あえて少し時間を空けた。文字に残るように、電話ではなくラインで送った。考え抜いた末の菅野なりの礼儀だった。

残り8試合で、2試合の先発が見込まれる。激しさを増す、CS争い。受け継いだエース像の見せ場が来た。【小早川宗一郎】

▽巨人原監督(菅野について)「ゾーンで勝負できているというか、妙な四球がない。彼の間合いの中で投げられているのかなという気がします」

○…中田が試合の流れを呼び戻す貴重な同点弾を放った。初回に先制され迎えた2回先頭。今季9打数無安打だったDeNA今永から左翼席へ23号ソロを放ち「打ったのはカーブ。早い回に追いつくことができて良かった」と語った。今月13試合目で7本塁打となり、4番がアーチを描けば9月は7戦全勝。原監督は「凡打したときでも相当悔しがっている姿は、我々頼もしく感じますよね」と目を細めた。

▽巨人ポランコ(4回2死、バックスクリーンへ23号ソロ)「有利なカウント(2ボール)だったので思い切って完璧に捉えることができた。いい追加点になって良かったよ」

▽巨人大城(同点の2回2死一塁から右翼席へ13号決勝2ラン)「先に点を取られたけど、粘って粘って勝ち越せたので、守備面でもバッティング面でも良かった」

○…巨人の第2次政権時代にエースとして内海を起用した原監督は、最大級の賛辞と感謝を贈った。印象に残る場面の1つに、先発して頭部死球を与えた後も続投させた09年WBCの韓国戦を挙げた。「ひと言ではなかなか語れないくらい思い出がありますね。野球に懸ける思いはすごく強い選手。優しい勝負師で、鬼にして戦える強さも持っていたんだけどあの時(WBC)は顔色も変わってね。まあ投げきって(くれた)というのも、いい思い出になってます。私の中で、ジャイアンツのエースとしてさんぜんと輝いたエースの一人であったということは言えますね」とほほ笑んだ。