阪神藤浪晋太郎投手(28)が今オフのメジャー挑戦を目指すことが27日、分かった。ポスティングシステムを使用しての大リーグ移籍を希望する。すでに球団には意思を伝えており、シーズン終了を待って交渉に入る。来季の新監督に岡田彰布氏(64)が内定したチームはこの日、優勝を決めたヤクルトに完勝して3位タイに浮上。矢野阪神の最終章、まずはCS進出を懸けた残り2戦に集中する。

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藤浪は人知れず覚悟を固め、プロ10年目を迎えていた。6年連続減俸となった昨年12月8日の契約更改。「エゴ」と表現してまで先発一本勝負を宣言した日、実は球団側に翌年オフのメジャー挑戦希望を伝えていた。勝負を懸けた1年は新型コロナウイルス感染もありながら、特に夏場以降は完全復調の気配。最速162キロの剛速球と150キロ前後のスプリットを最大の武器に、いよいよ今オフの大リーグ移籍を目指す。

ここ数年、米国への熱は高まり続けていた。侍ジャパンの一員として17年WBCで海を渡った際、本場のスタジアムの雰囲気を堪能。18年1月には米テキサス州で現パドレスのダルビッシュ、ドジャースのカーショーらと自主トレもともにしている。19年にはダルビッシュから米国トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」の道具を譲り受け、同12月には沖縄で同施設のセミナーにも参加。すでに異国のスタイルに違和感はない。

近年は制球難に端を発した不振に苦しんだ。「成績を残していないので…」と公の場でメジャーへの憧れを口にする機会は少なかった。それでも今年2月には日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏との対談中、本音を明かしている。「メジャーはやっぱり世界最高峰。ベースボールを体感してみたい気持ちはあります。今はタイガースでしっかり結果を残すことが第一ですけど、いつかはそういうところでプレーしたいという気持ちもモチベーションの1つとして頑張れています」。

今季は2年連続で開幕投手を任され、16試合登板で3勝5敗、防御率3・38。8月以降は先発7試合のうち6試合でクオリティースタート(6回以上、自責点3以内)を達成し、球場で視察を続ける大リーグ複数球団のスカウトにアピールを続けた。まだ海外FA権取得日数には遠く、今オフ移籍にはポスティングシステムが必要。とはいえ日本球界屈指の潜在能力は誰もが認めており、もし挑戦が決まれば、先発もリリーフもできる本格派として一躍注目株となりそうだ。

もちろん、今は矢野阪神の一員として、残り2戦となったCS争いに全身全霊を注いでいる状況。球団との本格交渉はシーズン終了後になるが、長年の苦悩を知る球団が大器の熱意を認める可能性は十分ある。エンゼルス大谷、カブス鈴木ら同学年も躍動する夢舞台へ、藤浪が走りだす。

◆ポスティングシステム 海外FA権取得前に大リーグへ移籍できる制度。日本野球機構(NPB)を通じて大リーグ機構(MLB)に契約可能選手として通知される。現在は以前のような入札ではなく、譲渡金支払い意思のある全球団と交渉できる。日本選手では00年オフにイチロー外野手(オリックス)が初めて申請し、マリナーズ移籍。阪神では06年オフに井川慶投手がヤンキースへ移籍した。19年オフの菊池涼介内野手(広島)、20年オフの菅野智之投手(巨人)西川遥輝外野手(日本ハム)のように、交渉が成立せず残留するケースもある。

◆藤浪晋太郎(ふじなみ・しんたろう)1994年(平6)4月12日生まれ、大阪府出身。大阪桐蔭3年時に甲子園で春夏制覇。12年ドラフト1位で4球団競合の末、阪神入団。1年目の13年にセ・リーグでは67年江夏(阪神)以来となる高卒新人2桁勝利。15年最多奪三振。14年日米野球、17年WBC出場。21、22年開幕投手。197センチ、98キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸4900万円。

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