阪神岡田彰布新監督(64)が「青空レッスン」を敢行した。秋季練習2日目の打撃練習が終わると、二塁ベース付近に選手を集めて身ぶり手ぶりで打撃指導を実施。練習後には報道陣を前に、打撃フォームの基本という「雨傘&立ちション理論」を熱弁した。静かだった初日から一転、早くも秋の甲子園がヒートアップした。

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三塁ベンチで打撃練習を凝視していた新指揮官がゆっくりと動きだした。ノックバットを手に二塁ベース付近に歩み寄ると、そこに選手、コーチの輪が出来上がった。岡田監督はバットを構えると、右足を押さえながらひと言、ふた言。二塁ベースを本塁に見立てて自ら手本を見せた。初日に「1週間は見て確認」と話していたが、早くも「前言撤回」。青空教室は10分近くに及んだ。

岡田監督 右投手、左投手でボールの軌道とか全然違うから。それに対応するためには、ちょっとスタンスを変えるとか、体の向きとかな。

新指揮官が気になったのは、投手の特徴に関係なく漫然と構える打撃スタンス。左投手対左打者の場合、打者は軸足である左足を半歩下げて、捕手側につま先を開ければどうだ? 評論家時代から差し込まれる場面が目立つナインを見て気になった点だった。

一塁アルプス席で報道陣に囲まれると、打撃理論はさらに熱を帯びた。「俺らは昔、野球始めた頃はな…」と始まったのは打撃フォームの基本の基。「雨傘&立ちション理論」だった。

岡田監督 雨降りで傘さしたところでバット構えろ言われたけどな。(高い位置で)傘差せへんやんか。しんどいやんか。だから一番楽なところで構えてるから、一番早く楽にバットが出るというかな。そんなんわな、もう当たり前と思ってたけどな。で、下半身はどうするんですか言うたら、立ちションするカッコでやれってな。そうよ、力が一番抜けてるというな。

なるほど! 膝を打つ報道陣に岡田監督は苦笑いで、すかさずフォローも入れた。「今の若い子なんか、そんなん知らんやろ。そんな言葉を。立ちションもしたらあかんもんな、今。今あかんな、女子野球があるから、立ちションとか言われへんな。えっ、何ですか? 言われるわ」。スタンドはドッと笑いに包まれた。秋季練習2日目にして鋭さを増す岡田節。行動で、そして言葉で。若虎たちに岡田の教えが惜しみなく注がれる。【桝井聡】

○…陽川は岡田新監督の助言を生かす。この日、打撃の直接指導を受けた。「右手の使い方です。スローイングとかと一緒で、そういう話です」。今季は代打中心の出場で打率2割9分4厘、1本塁打だった。岡田監督は「右手の強いバッターなんやな。ティーを見ていてもちょっと抑え込む打ち方をしていた。『ネットの右上に打て』と。右投げ右打ちは右手が強いのが当たり前。俺もそうやけど、それをいかに殺して。こねるのをなくす、というかな」と見抜いていた。

○…中野は岡田監督から新たな構え方を提案された。特に左投手が相手の場合、軸足である左足を背中側へ半歩下げて、左足のつま先を外側に広げる感覚。「いろいろ感じたことのない考えをおっしゃっていた。ボールを見やすくする工夫はしていかないといけないと思っていた。練習で試しながら、自分に合ったものがあれば取り入れながらやっていければと思います」と助言に感謝した。

○…西純はプロ4年目の来季も先発に意欲をみなぎらせた。この日の秋季練習後「自分は先発で投げていくと思っているので、そういう準備をしたい」とキッパリ。クライマックスシリーズは救援で登板したが、公式戦では先発で6勝した。救援の経験を「早い回で降りてしまった時にリリーフの方にすごく負担がかかる。先発で投げるときは責任を持ってイニングを投げないといけない」と振り返る。自覚十分にステップアップする。

○…今季、セットアッパーで大活躍した浜地はフォーク習得で進化を狙う。秋季練習後、今秋のテーマを「落ち球が必要だとすごく思った。落ち球で空振りを取れれば投球の幅が広がる」と明かした。フォークやスプリットのマスターに励む。今年は52試合に投げて22ホールドポイント、防御率1・14だった。来季は05年岡田阪神優勝時のJFKばりの必勝リレー入りも目指す。「勝ちを左右する、勝っている試合を次につなぐポジションを目指さないといけない」と気合を込めた。

○…日本ハムからトレードで加わった渡辺諒は「浜風打法」で勝負する。新しい本拠地でフリー打撃を行い、左翼に柵越えを連発。持ち前のパンチ力を披露した。「風は感じました。こすった当たりでも左中間、レフトは伸びる。乗せるイメージで打っていこうと思います」。19年にシーズン11発など、プロ通算28本塁打の右打ちだ。岡田監督に打席の立ち位置などを学び「自分のモノにできれば」と感謝していた。

○…新任の水口打撃コーチは野手陣のレベルに納得した。「しっかり振っていますね。ポテンシャルが高い選手が多いと思います。20代後半とか前半、それくらいの選手が多いので、伸びしろはいっぱい持っていると思います」。秋季練習2日目は高山、陽川を指導。「基本中の基本です。腰寄りの手の使い方とか、その辺でもし参考になればと思って伝えました」と振り返った。

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