<SMBC日本シリーズ2022:ヤクルト0-3オリックス>◇第6戦◇29日◇神宮

オリックス山崎福也投手(30)が快投を演じた。第2戦に続く先発で5回をわずか1安打で無失点。昨年から日本シリーズ12試合目で初めて先発投手に白星がついた。

    ◇    ◇    ◇

サチヤ、ありがとう-。オリックス山崎福の躍動を、心から喜ぶ人がいる。2歳上の兄福之(ふくゆき)さんだ。この日は母と神宮で観戦。山崎福が先発した第2戦もスタンドから見守った。

「僕も野球をプレーしていました。自分もプロに行きたかった。ただ、挫折した。今、彼に夢を託して必死に応援しているんです」

福之さんは聖望学園-国学院大-セガサミーで活躍した左投げの投手だった。弟のマウンドは自身の登板よりも緊張するそうで「僕はオリックスファンみなさんと同じ気持ちで、ワクワクドキドキしながら見ています」と爽やかに笑う。

そんな兄は、福也に勇気を与える存在だった。08年3月21日。山崎福は中学3年時、札幌市内の病院の手術室で目を閉じた。「また野球がしたい…」。およそ6時間に及んだ脳腫瘍の手術だった。高校生だった福之さんはセンバツ甲子園に出場中。病室の画面で、兄の勇姿を焼き付けた。

福之さんは言う。「当時、僕が野球を頑張ったことで、彼に力を与えられていた。今は全く反対。僕が元気をもらっています」。兄弟の絆で、歓喜の涙に1歩近づいた。【オリックス担当=真柴健】

【関連記事】オリックスニュース一覧