日米球界のレジェンド2人が、女子野球の発展に向けて共闘した。イチロー氏(49=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が率いる草野球チーム「イチロー選抜KOBE CHIBEN」と「高校野球女子選抜」が3日、東京ドームに駆けつけたファン1万6272人の前で真剣勝負。「9番投手」で先発したイチロー氏のオファーを受けた西武、レッドソックスで活躍し昨年引退した松坂大輔氏(42)も「4番遊撃手」で初参加。2人が、09年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)以来となる同じユニホームを着て戦った。

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背番号1の投手イチロー氏の後ろを、背番号18のショート松坂氏が守った。先制を許した直後の初回1死三塁、中前に抜けそうな当たりにグラブを伸ばしてさばき、笑顔。「守っている時に不思議な感覚というか、なんとかサポートできるようにと思った。大変でしたけど楽しかったです」。

遊撃手は、江戸川南シニア時代以来。1日に神戸市内で行われたチームの練習に参加。試合前日も2時間ノックを受けた。高校女子と初対戦し「初回の三塁打はびっくりした。あの打球を見て、ちょっと後ろに下がった。予想していたよりもレベルが高かったです」と敬意を表した。

横浜高で、甲子園でも「4番・投手」の経験がある。初回に初安打を放った記念球はイチロー氏の「ヒットのボールは必ず取るから」という計らいでベンチへ。実はNPBやメジャーの記念球が手元になく、松坂氏は「(イチロー氏の)サインをもらってボストンの家に飾ります」と喜んだ。

3回無死二、三塁では左前適時打を放った。続く打者の右方向への打球で二塁へ。しかし右飛でボーンヘッドとなり併殺。ベンチ前でヘルメットを取り、イチロー氏に「すみません」と謝罪すると、お尻をたたかれた。「間違えたというか、打球が見えなかった。言い訳ですけど、見失いました」と反省。一方で「オイ」と説教したイチロー氏は「そういう、ゆるいところが大好き」とちゃめっ気たっぷりに愛を伝えた。

“現役復帰”プランも明かした。今年はオファーを受けた8月から慌てて調整。来年を見据え「毎年1回はこれがあると頭に入れて、継続的に体を動かしたい。少しだったら投げてもいいかなと思えるくらい、また状態が戻ってきたらいいですね」。イチロー氏とともに、女子野球界の道しるべになる。【保坂恭子】

◆イチロー氏と松坂氏 日本のプロ野球で99、00年に対戦。99年5月16日(西武ドーム)での初対戦で3打席連続三振を奪った松坂氏は「今日で自信から確信に変わったと思います」とプロでやれる手応えを口にした。日本通算34打数8安打(打率2割3分5厘)、1本塁打、4三振。大リーグでは07~12年に対戦し、27打数7安打(2割5分9厘)、本塁打なし、4三振。06、09年のWBCでは、ともに優勝メンバー。昨年12月4日、松坂氏の引退セレモニー(メットライフドーム)では、スーツ姿のイチロー氏がサプライズで登場し、花束を渡した。

○…全日本女子野球連盟の山田博子会長は、初めての有観客開催となり、関係者や観客に感謝した。「最高の舞台で試合をさせていただき、たくさんの方に見ていただいてうれしい」と話した。スタンドでは、観客から「女子選手も上手ですね」と声をかけられたという。「持論は、連盟は将来をつくる団体でないといけないと思っている。これから、さらに将来につなげていきたい」と話した。

○…習志野、東海大高輪台による吹奏楽部の応援が実施された。それぞれ約100人規模で試合前には応援合戦も実施され、習志野の「美爆音」など両校の演奏がドームに響いた。松坂氏は「興奮しましたね。(打席で)打てるって思いますよね。乗せてくれる。またプロ野球と違った良さというんですかね。久しぶりに味わわせていただいて、ブラスバンドの皆さんにも感謝しています」と話した。