プロ野球の発展に大きく貢献した野球人に贈られる「正力松太郎賞」の選考委員会が8日、都内で開かれ、オリックスを26年ぶり日本一に導いた中嶋聡監督(53)が初受賞した。秋季キャンプが行われている高知市内で会見に応じ、球団では、96年仰木彬監督以来の快挙を喜んだ。

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沈着冷静な指揮官は、珍しく破顔して会見に臨んだ。「正力松太郎賞」の受賞を伝え聞くと、中嶋監督は冗舌になった。球団ではイチロー、仰木彬監督に続く3人目の受賞。「すごいですよね。イチローくんですよ? 仰木さんですよ? はい、すごいです。そこに名前があっていいのかな…」と照れまくった。

悲願の日本一の景色を見た指揮官。「ナカジマジック」と呼ばれる采配で「リーグ連覇&日本一」を達成。「チームが優勝、日本一になった。代表としてもらったようなもの。個人でもらった感じはしない。“一応”監督ですので(賞を)もらったのかな」と謙遜した。

プレーヤーファーストの思いはシーズン中と変わらない。「(ヤクルト)村上くんとか山本由伸(オリックス)とかですね。(令和初の)3冠王、2年連続(投手)4冠。本当に素晴らしいことだと思うんですけど…。いいんでしょうか、私で」と苦笑いの連続だった。自信を持ってタクトを振るっていたように見えたシーズンだったが「(自信は)ないです。本当にない。大胆じゃないと思うんですけどね。結構、ビビリなんですけどね」と振り返った。

指揮官にもチームにも慢心はない。日本シリーズ後はほとんど休んでいない。来季V3を成し遂げるため、3日の御堂筋パレードに参加すると、翌4日からは高知・秋季キャンプで若手選手を鍛えている。「忙しいうちが花かと思います。若い選手と練習していると、楽しみがいっぱいありますんでね。いい感じです」。紅林、太田、来田らの力強いスイングを見て、指揮官は「(チームに)力が付いてきてはいるとは思う。ただ、本当に強いと思ったことはない。まだまだ、強くなるチーム。この秋季キャンプで、若い選手たちの底上げしないといけない」と力を込める。チーム再建に成功。野球漬けの日々に贈られた栄誉だった。

◆正力松太郎賞 日本のプロ野球の発展に功績を残した正力松太郎氏を記念し、1977年(昭52)に制定。プロ野球界に貢献した監督、コーチ、選手、審判員を対象に、選考委員が選出。受賞者の最多はソフトバンク工藤監督の5度。賞金500万円、特別賞は300万円。

◆選考委員 王貞治(ソフトバンク球団会長)杉下茂(野球評論家、解説者)中西太(同上)山本浩二(同上)門田隆将(ジャーナリスト)※王氏と中西氏は欠席で委任状を提出