阪神岡田彰布監督(65)が、大山悠輔内野手(27)に「勝利打点王」指令を出した。1981年(昭56)から88年まで両リーグの公式タイトルとして存在し、セでは00年まで特別賞として継続された勝負強い打者に贈る勲章だ。指令は、現時点で来季の4番が大山を最有力と考えている表れか。目指す「アレ=優勝」へ、本塁打よりも打点、中でも勝利に直結する勝利打点こそが、岡田監督が4番打者に一番求めるものだ。

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岡田監督が大山に“消えたタイトル”を目指せと珍指令を出した。「昔は勝利打点いうのもあったもんな。いかに勝負強く、大事な時に決勝打を打ったという意味で、すごい価値あったと思うけどな。勝利を決めた打点やからな、結局」。

「最多勝利打点」は81年に両リーグのタイトルとして設けられた。「最初、誰が取ったか知ってる? 佐野さんや」。初年度の受賞者はチームの先輩で主に5番岡田のあとの6番が多かった佐野仙好。その年は48打点ながら、15回もの勝利打点を記録した。88年限りで廃止されたが、岡田監督にとっては勝負強さをたたえる称号として印象深いようだ。歴代最多は85年の阪神バースの22回。74勝のうち、約3割をバースのバットで決めたことを物語る。

今季チーム最多打点は大山の87で、勝利打点もチーム最多の11を記録した。だが19回で“勝利打点王”のヤクルト村上には8差をつけられた。大山は勝利最優先で、犠飛や内野ゴロでもしぶとく打点を挙げる打撃を続けてきたが、岡田監督のゲキはもっと磨きをかけて徹底しろというものだ。

勝利打点王指令は、現時点で4番の最有力を大山と考えている表れだろう。高知・安芸キャンプでの3週間で打撃改造に取り組んで飛距離が伸び、打球にも力強さが増した。侍強化試合後に合流した佐藤輝がアピール不足の中、4番争いで大きくリード。大山の勝利打点が増えるほど、「アレ=優勝」に近づけるという青写真が浮かび上がる。

岡田監督は「そんな50本も打たんでええで。30本くらい打ってくれたら十分やんか」と本塁打増も期待する。「しょうもない時、負けゲームでどうでもいい時に本塁打を打っても1本は1本やからな」とも補足。「クリーンアップ打ってるもんは、オレもそうやったけど、やっぱ打点の方がな。貢献度というかな」と打点が最重要と力を込めた。

チーム内で「岡田賞」として、表彰すれば? と問われると「そんなん、ややこしいわ」と、笑い飛ばした。タイトルからは消えたが、指揮官のツルの一声で来季は勝利打点を数える楽しみもできた。果たして大山はどれだけV打点を稼ぐのか。その数に、岡田丸の浮沈がかかっていると言えそうだ。【石橋隆雄】

◆勝利打点 その試合での最終的な勝ち越し点となる打点を挙げた打者につく。暴投や併殺打などが決勝点となった場合は該当なし。プロ野球では1981年(昭56)から88年までタイトル表彰の対象となり、セ・リーグ初の勝利打点王は阪神の佐野仙好。現監督の岡田彰布は80~93年の阪神在籍中、97回勝利打点をマーク。85年の日本一時はチームではバースの22回に次ぐ13回で勝利に貢献した。

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