阪神が11月のドラフト会議で大学日本代表の主砲、中大・森下翔太外野手(22)を1位指名しました。日刊スポーツでは、即戦力期待のスラッガーがプロに指名される道のりを「翔ぶが如く」と題し、5回連載でお届けします。

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打撃での成長を遂げた森下は、メンタル面も大学時代に成長した。試合中や練習時に心の浮き沈みがあり、下級生の頃はうまくいかないと、一塁まで全力疾走を怠ったり、ベンチで声を出さない時もあったという。

変わったきっかけは、3年春の練習中だった。森下のテンションが低いまま終わったシート打撃後の全員ミーティング。一緒にプロの世界を志してきた同期の北村恵吾内野手(22)に叱咤(しった)激励された。「態度に出さないでやろうぜ! 俺らがもうちょっと頑張らなきゃいかない!」。

中大・清水達也監督(58)は当時を振り返る。「いろんな人にいろんなことも注意もされてるだろうけど、仲間からそういう言葉には、何かを感じたのだろう。2人がいろんな話をして森下自身も気づいたり、感じたりして変わっていった部分がある」。

その年の秋、4年生が引退して新チームになると、北村が主将に就き、森下は副主将に任命された。仲間からの期待を受けて、最高学年としてチームを引っ張る自覚が宿り、心を一新した。「中軸としての自覚も芽生えましたし、北村の言葉に限らず、チームメートからの言葉は精神面が変わるきっかけになったと思います」。

最下位に終わった4年春の東都リーグは、入れ替え戦に突入。東洋大と初戦を落とした。だが、チームの崖っぷちで森下は2本の二塁打を放ち、タイに持ち込んだ。そして第3戦は仲間が2-1でサヨナラ打を決め、残留をつかんだ。

入学時から見守ってきた指揮官も、その成長ぶりに目を細める。「入れ替え戦やすごく土俵際でのしんどい戦いでも、前向きな声でプレーしていたことは、あいつも本当に成長したなと感じた瞬間かな」。

心身ともに成長して迎えた今秋。森下はドラフト前日の11月19日の日大戦でアーチを描き、ダメ押しアピールした。打力を買っていた阪神岡田監督もその映像を最終チェック。高松商・浅野翔吾外野手(18=巨人)の外れ1位で指名を受けた。ブレないメンタルを確立したは森下も「最終的にはだいぶ成長できたと思う。もっと強くなってプロの世界でやっていきたい」と手応えをつかんでいる。

中軸で切磋琢磨(せっさたくま)してきた北村は、ヤクルトに5位指名された。今度は敵味方に分かれ、同じセ・リーグで相まみえることになる。そして森下にはもう1人、チームにかけがえのない存在がいた。【三宅ひとみ】(つづく)

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