プロ野球の「現役ドラフト」が9日に行われ、ソフトバンクからは大竹耕太郎投手(27)が阪神に移籍することが決まった。

なりふり構わず意思を貫く。大竹耕は長期的に物事を考えるクレバーな左腕だった。22年4月6日。2軍広島戦で7回4失点だった。首をかしげて球場を後にするかと思ったが、違った。「僕は相手が真っすぐだと分かっていても真っすぐで勝負して抑えられるようにならないといけない。2軍ならば、なおさら。2軍で自分の持ってる技を出し切って抑えにいってもだめでしょう」。

師匠はベテランの和田毅。大竹耕の理想は「和田さんの直球」だった。先発で変化球を1球しか投げない日もあった。スタンドの鷹党からため息が漏れようと、確かな着目点を持っていた。

大竹耕は「変化球は逃げになる」と話したことがある。「変化球に頼ると、真っすぐの質を上げる努力をおろそかにしてしまう。ここぞっていう時に真っすぐで勝負できる自信がないと話にならない。和田さんとも話したし、自分でもそう思いました。だんだん『力を出す』ことと、『力むこと』の差が分かってきました」。最速144キロだが、和田には「150キロが出せる」と太鼓判を押されてきた。ただ、球速以上に伸びる直球を追い求めてきた。

通用するかはセ・リーグの舞台で答え合わせになる。最後に「一番スカっと打者を抑えられる瞬間はなんですか?」と聞いた。答えはシンプルだった。

「相手が真っすぐを狙ってて空振りする時。見逃しより、ここは真っすぐしかないなと分かってて、予想と違う真っすぐの時。バッターの予想と異なる1球。和田さんは右打者に対してアウトコースに投げて空振りが取れる。あれです」。セ界では輝いてほしい。【ソフトバンク担当 只松憲】

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