巨人岡本和真内野手(26)が西武中村剛也内野手(39)から「40発の壁」を越える思考法を伝授された。都内で6年連続となる合同自主トレを行った。

今季は5年連続30本こそクリアしたが、18年オフから「おかわり師匠」と目指してきた初の40という大台には及ばなかった。未知なる領域の到達に向けて「1カードに1本」の意識を授かった。【取材・構成=久保賢吾、上田悠太、小早川宗一郎】

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岡本和の大きな体が鋭く回転する。ギュンとスイングの音が響き、スタンドティーの白球は外野の芝深くに飛んでいった。

中村 30発はイージーやろ。

岡本和 30はいけるかなという感じはあります。

年に1度の特別セミナー。今回のテーマとなったのは「40発の壁」という思考論だった。

中村 ペースが全然違う。

岡本和 30発は月5本でいけるじゃないですか。それが40発は7本ずつ。2本増やすのが大変。どっかの月に8、9発を打てても、崩れた月も最低5本を打たなきゃいけないので。

「40発の壁」を越える計算式。2人には明確な違いがあった。

中村 1カードに1本打てば、だいたい48。そうやって計算していたなぁ。

岡本和が「1カ月×7本」に対し、中村は「1カード×1本」のペースを理想とした。「1カード」を目安とすると、気持ちの切り替えも進みやすい。もし2試合連続ノーアーチでも、3戦目で打てばいいとも割り切れる。

中村 1本出たら、続けて出るから。もちろん打たれへん時期もある。だけど焦らない。次の3連戦で、2本とか、3本打つとか。打てる時には稼げばいい。

1発出れば、固め打ちモードのスイッチも入る。現実は1試合2本以上の“おかわり弾”は歴代9位タイの43試合。しかし、思考の上では「1カード×1本」の規則正しさを追い求める。こうして40発以上を3度(08年46本、09年48本。11年48本)クリアした。

その言葉を岡本和はうなずきながら、かみしめた。「1本出たら、いつもはポンポンポンと出るんです。でも今年は出なくて、しんどかったです」。75試合で20アーチを描いたが、7月から不振に。30本到達は140試合目だった。

40の先には「50発の壁」がそびえ立つ。中村も未知の世界。「1カード1発で48発だけど、それでも届かへんから50発は難しいんよ。村上はえぐい」としみじみ話した。岡本和も「練習でえげつなく飛ばしてます。逆方向もやばいです」と言った。

思考論から発展し、中村は引き際の美学も口にした。これまで454本塁打、1698安打。500本塁打を達成した過去8人とも2000安打も成し遂げているが、“史上初”の域を見据える。

中村 500まであと46。2000いかずに打ちたいなぁ。それで辞めるってのもいいかな

そう冗談交じりで口にし、2人で笑い合った。

希代のアーチストが独特の世界観を披露したが、岡本和も節目の数字を視野に入れる。通算165本塁打。「あと35本で200ですね」。すかさず中村から「オールスターぐらいまでに」と愛あるツッコミを受けた。互いに刺激を受けながら、目指す高みに向かっていく。

○…西武渡部は2年連続で合同トレに参戦した。左足の使い方などを意識し、スタンドティーを飛ばした。2年目の今季は1軍出場なし。中村からは「来季は活躍する?」とハッパをかけられ「頑張ります」。危機感を強めながら、決意を新たにした。

○…巨人中島は合同自主トレに初参加した。これまでの5年間はスケジュールの都合で参加できず。ようやく実現した夢のコラボに「いい練習ができて、良かったです」と充実した表情で振り返った。