新時代の最強外野陣を構築する。日本ハムは1日、沖縄・名護でキャンプ初日から異例の紅白戦を行い、外野守備に就く選手の横にレジェンド外野トリオがサプライズ登場。中堅に新庄剛志監督(51)、右翼に稲葉篤紀GM(50)、左翼は新任の森本稀哲外野守備走塁コーチ(42)が入り、実戦の中で密な連係で鉄壁を誇った外野守備の極意を伝えた。06年ゴールデングラブ賞トリオによる豪華でレアな指導から、日本一を目指すシーズンが始まった。

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紅白戦が始まる約6分前。おもむろに新庄監督が一塁側ベンチから出てきた。向かうのは、かつての庭である中堅。続いてジャージー姿の稲葉GMは右翼、森本コーチは左翼へ。現役時代と同様に互いの距離感などを調整しながら、それぞれの守備位置に就いた。その時点で試合開始まで、あと2分。その場を離れない3人の元へ白組の外野3選手が走って駆け寄った。場内はざわついたが、パフォーマンスでは、ない。

新庄監督 紅白戦の前に俺たちが現役時代にやっていた動きを選手に教えようって。久々にやってみたけど距離感がわからない。「稀哲、こんなに遠かった?」「こんなに近かった?」「いやいや、こんなもんでしたよ」ってやりとりを外野の選手に伝えた。

試合が始まっても、3人は外野グラウンド内にとどまった。1球ごとに守備位置の考え方を丁寧にアドバイス。「センター中心で、あっちゃん(稲葉GM)と稀哲とやっていたものを急にはできないと思う。わかってもらえるように常に今年は気がついたら言う」。1回裏の紅組の外野陣も同じく指導した。

選手たちにはサプライズだった。白組の左翼を守った松本剛は「守備に就くのが遅れたと。もうレフトに人がいたから、あれって(笑い)。そしたら、稀哲さんだった」。驚きつつも、勉強になることばかりだった。「ポジショニングの取り方や声の掛け方。このバッターだったら、この風だったらなど細かく教えてもらった。その感覚を大事にしたいですし、自分たちで考えて出来るようになりたい」と、レジェンドたちによる外野守備の極意に触れてレベルアップを誓った。

実は、今季から着任した森本コーチも「僕もびっくりしたんですよ」と、直前に知らされていた「リアル・ポジショニング指示」。続けて「外野の守備って、これだけ考えてやっているから守りで攻められる。それを伝えられるのが僕ら」と言った。日本一を狙う今季は、一時代を築いた最強外野トリオが新時代を担う新たな鉄壁の外野陣をつくりあげる。【木下大輔】

◆新庄、稲葉、森本トリオ 3人合わせてゴールデングラブ賞受賞18度。外野手としての受賞回数は新庄が10度、稲葉が4度(他に一塁手で1度)、森本が3度。日本ハムが日本一になった06年はこの3人で78年阪急(福本、簑田、ウイリアムス)以来、史上2度しかない同一球団の外野部門独占受賞だった。投手交代時などに3人がグラブを頭の上に乗せ、片膝をついて集まるのはおなじみの光景だった。

○…新庄監督はキャンプ初日の紅白戦を振り返って「こんだけ打つとは思わなかった」と野手陣の仕上がりの良さに感心した。印象に残った選手については「まずは今川君の体に驚いた。ベンチプレス150キロだって。スイングのスピードも上がって、ライトに引っ張るような打球で。結果とかは関係なしに、ボールの捉え方はいいものがあった。あとは(チーム1号の)石井君、新人の“なまら君”(奈良間)。新人で2本ヒット。たいしたもん」と評価した。

○…紅白戦で“チーム1号”を放った石井は「強くたたこうとした結果。率直にうれしい」。2回、左腕の上原から右翼ポール際へ特大弾。昨秋、新庄監督からパワーアップ指令を受け、オフは食生活の改善と筋トレに励んだ。体重80キロから3キロ増。3月開業の新球場でも1号を狙う伏兵は「(ライバルは)清宮あたり。1打席目で力むと思うのでチャンス」と、ほくそ笑んだ。

○…ドラフト1位矢沢宏太投手(22=日体大)と同5位奈良間大己内野手(22=立正大)がキャンプ初日の紅白戦で実戦デビューした。矢沢はDHで先発出場し、途中から右翼の守備に入った。「初めての実戦で強風。難しかったけど捕れて良かった」。奈良間は二塁打を含む3打数2安打と躍動。「プロとして初めの1日で緊張はあった。緊張した中ではいい結果だと思う」と納得の口ぶりだった。

○…新庄監督は、昨年も使用していた真っ赤な塗装が施された電動キックボードに乗って、さっそうと球場入りした。今年は昨年よりも新型コロナ対策の規制が緩和され、宿舎から球場までの動線の近くまでファンの立ち入りが可能となったことで、新庄監督の登場を待ち構えていたファンからは歓声が起きた。

◆キャンプ初日の紅白戦 中日落合監督が就任1年目の04年2月1日に紅白戦を実施。オフも選手に自覚を持たせて調整させる狙いがあった。試合は降雨で5回終了だったが、エース川上や野口、岩瀬ら主力10投手が登板。翌2日も紅白戦を組んだ。最近では19年ロッテも実施。井口監督はドラフト1位の藤原(当時大阪桐蔭)に指名あいさつをした18年10月29日の段階で、早くも「2月1日に紅白戦があることを伝えました」と実戦重視メニューを明かし、試合では涌井と石川が先発した。

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