もう、悔し涙は流さない。ソフトバンクのリチャード内野手(23)が汚名返上の1発だ。ソフトバンクは14日、宮崎春季キャンプ第3クール最終日に、今季初実戦となる紅白戦を行った。特別ルールにより「10番打者」での起用となったリチャードが、4回に右中間の特大ソロ。8日にチーム打撃を遂行できずに涙を流した大砲が、持ち前の長打力で開幕1軍入りをアピールした。

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会心の1発にも、リチャードは冷静沈着だった。試合後の第一声も「えー、そうですね。良い当たりだったと思います」。達観した表情で「風が運んでくれたと思います」。そう淡々と振り返った。

今季初実戦となる紅白戦は、特別ルールにより「10番・一塁」で出場。4回2死走者なし、泉の初球ストレートを捉え、右中間の芝生に弾ませた。8日のチーム打撃では、本塁打を放ったにも関わらず藤本監督らに叱られて涙。右方向へのゴロ、というサインを遂行できなかった。

「最近の実戦では良い当たりもできずに終わることが多かった。振り返ると求めていることが大きかった。反省。求めないといったらアレですけど、なるようにしかならないと思いながら」。打席では肩の力を抜き「打ちたい欲求」を静めた。バットに当たれば「どこかに飛ぶだろう」。無心でバットを振り、汚名返上の一打につなげた。

第1クールの4日夜。チーム宿舎で王会長の部屋に呼ばれた。約30分間にわたり「世界の王」から金言とゲキをもらった。耳の痛い話もあったが、最後に「疲れてるだろう」と高級チョコレートをもらった。「いろんな話をしてもらいました」と感謝した。そしてこの日はバレンタインデー。王会長に本塁打の結果で「お返し」だ。

今キャンプは「寝て、起きて、トイレに行って、シャワーを浴びて…」とルーティンを崩さない。宿舎への最終バスが出る午後6時半ギリギリまでファンにサインを書き、朝8時半から始まるアーリーワークにも毎日参加。「練習してるので。力まなくても打てるかなと」。少しだけ自信もついてきた。

開幕1軍入りに向け、今後もアピールが求められる。だからこそ、リチャードは満足しない。この日のアーチは、競争に加わるスタートラインだ。【只松憲】

◆リチャードの涙 第2クール2日目の8日、チーム打撃の練習で泣いた。走者一塁エンドラン、右方向へのゴロを打てと指示された状況で、初球をなぜか見逃し。2球目を右中間本塁打としたが、“罰走”。その後も打ち直しが続いた。藤本監督は「チーム打撃なんやから、転がせと言われたら転がせと。そういう意識も見えてこない」とカミナリを落とし、リチャードは涙を流した。

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