キューバ代表としてWBCに出場した中日ジャリエル・ロドリゲス投手(26)が亡命した可能性が29日、高まった。同日に中部国際空港着の航空機で再来日する予定だったが、未搭乗で失踪状態。立浪監督も「いてくれない人と困る。探してきてください」と困惑するしかない。昨季最優秀中継ぎ右腕に突如発生した大騒動。セ・リーグ開幕2日前、中日が悲鳴を上げている。

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悲しいが、予想通りだ。再来日予定日だったこの日、ロドリゲスは中部国際空港に姿を現さなかった。昨季45ホールドポイントで最優秀中継ぎ賞に輝いたキューバ人右腕が、消えた。

「みんなでジャリエル(ロドリゲス)を探してきてください」

立浪監督は冗談めかしながらではあるが、切実な願いを報道陣に吐露した。開幕まで残り2日。中日が有事に揺れている。

日本時間の前日28日夜遅く、全米野球記者協会に所属するフランシス・ロメロ氏がツイッターで衝撃の情報を流した。

「彼は今朝、ドミニカ共和国に到着した。中日との契約を破棄しており、将来的にはMLB球団との契約を望んでいる」

まさかの亡命報道を受け、球団はキューバ野球連盟と連絡を取り合っている。だが、所在は確認できていない。加藤球団代表は「今日午前着の予定の便で来日しなかった。本人に連絡を取っているが、電話には出ない」と現状を説明した。

ロドリゲスはキューバ代表としてWBCに出場。2試合先発で計7回1/3を投げ、防御率2・45でベスト4進出に貢献した。敗退後、球団と帰国日程を調整。同郷のマルティネスは27日に再来日したが、ロドリゲスは失踪状態に入った。

中日は昨季、7回から清水、ロドリゲス、マルティネスの勝利の方程式を確立。立浪監督もリーグ屈指の救援陣と自負するが、亡命が事実であれば大幅な戦力ダウンは避けられない。「いてくれないと困る人が現状いない。祖父江もいるし、先発から後ろに回さないといけないかもしれない。投手コーチと相談して決めていきたい」。指揮官は終始、厳しい表情だった。

中日はオフ、キューバ政府を通じてロドリゲスと推定年俸2億円で複数年契約を締結。今月9日に支配下登録も公示していた。20年にソフトバンクのキューバ人、オスカー・コラス外野手が亡命した際は、同球団が制限選手公示(その後自由契約)。仮にロドリゲスの亡命が判明すれば、同様に制限選手公示により、メジャーなどへの移籍阻止に動く可能性もある。

◆野球協約第60条(処分選手と記載名簿)

選手がこの協約、あるいは統一契約書の条項に違反し、コミッショナーあるいは球団により、処分を受けた場合は、以下の4種類の名簿のいずれかに記載され、いかなる球団においてもプレーできない。

(2)制限選手と制限選手名簿(レストリクテッド・リスト)

選手がその個人的事由によって野球活動を休止する場合、球団はその選手を制限選手とする理由を記入した申請書をコミッショナーに提出する。コミッショナーが、その選手を制限選手とすることが正当であると判断する場合、その球団の申請は受理され、コミッショナーによりこの協約の第78条第1項の復帰条件を付し制限選手として公示され、制限選手名簿に記載される。制限選手の参稼報酬については、1日につき参稼報酬の300分の1に相当する金額を減額することができる。なお、減額する場合は、上記の方法で算出した金額に消費税及び地方消費税を加算した金額をもって行う。

◆制限選手 最終所属球団に保留権を残したまま、年俸の支払い、移籍を制限する制度。選手が個人的な事由により野球活動を休止する場合、球団がコミッショナーに申請し、正当な理由での処分と判断された場合に適用される。公示された選手は所属球団に戻らない限り、いかなる球団においてもプレーはできない。また球団は、公示日から1日につき年俸の300分の1を減額することができる。

◆キューバ人選手と亡命 キューバと米国は1961年に国交を断絶。2015年に回復したが、トランプ政権で再び「テロ支援国家」に指定。移民など往来に制限がかり、経済制裁も厳格化した。野球界でも影響は大きく、キューバの国籍を持つ選手は、メジャーでプレーできない。過去に日本でプレーして亡命した選手には、元DeNAのグリエル兄弟、元巨人ガルシア、元ソフトバンクのコラスらがいる。

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