西武松井稼頭央監督(47)の初白星は、あと1人で無情に消えた。1点リードの9回、セーブシチュエーションで送り出したのは新人の青山美夏人投手(22=亜大)だった。

2死を奪い、オリックス森を迎える。打席でブーイングも発生した、昨年までの西武戦士。初球のスプリットを右翼席に運ばれた。「ワンバウンドで」。青山はボールから入ろうとしたが、甘く入ってしまった。西武ファンの時が止まり、指揮官の表情も固まった。

通算175セーブの増田でも、新外国人右腕のティノコでもなかった。9回に抜てきしたのはドラフト4位ルーキーだった。

「初めから青山で今日は行くって、僕は決めてましたので」

試合後、松井監督はキッパリ言い切った。オープン戦の終盤に腹を決めた。「彼の気持ちの強さもそうですし、球の強さもそうですし」。マウンドに上がってすぐ、2球続けて140キロ台終盤を左打者の懐に入れて追い込んだ。

目を見張る剛速球はないが、プロがうなる投手だ。亜大時代に出場した国際大会で、オランダ戦で対戦したバレンティン(元ヤクルト)をスプリットで空振り三振に。「フォーク、いいね」とたたえられた。今度はその1球のスプリットに泣いた青山は「悔しいです」としつつ「引きずっていたら(ダメ)」と前を向いた。松井監督も「もちろん増田も投げていきます」としながら、強心臓ルーキーも再び9回に送る構えだ。若獅子は苦汁を糧に強くなる。【金子真仁】

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