世界一に輝いたWBCの勢いそのままに3月31日、プロ野球10球団が開幕戦に臨んだ。

WBC決勝で本塁打を放ったヤクルト村上宗隆内野手(23)が初回に決勝弾となる自身初の開幕アーチを放った。WBCで経験した世界トップレベルの試合と、目標だったエンゼルス大谷翔平投手(28)を間近で見て感じ「世界トッププレーヤーになる」と心に決めたスタートラインで、自らその号砲を鳴らした。

 

意識は既に“村神様”の上にあった。見据える高みはどこまで上にあるのか。開幕戦の第1打席から村上の目つきは違った。1回2死二塁。カウント2-1から広島大瀬良の120キロの低めのカーブを、左膝が地面につきそうなぐらい姿勢を低くしながら捉える。先制決勝2ランをバックスクリーン左にたたき込んだ。

3月6日、侍ジャパン強化試合の阪神戦で大谷が放った「膝つき弾」をほうふつとさせる1発に「もともとできます。第1打席で良いパフォーマンスができて良かった」と言った。同21日のWBC決勝から2試合連続のアーチだが、帰国してからの約1週間も「手の意識が強すぎたり、肩が入りすぎたり、バットヘッドの位置だったり。いろいろ挑戦しながらやっていこうと今年決めている」と試行錯誤を重ねた。

「世界一のプレーヤーになる」。同28日、ヤクルト本社への優勝報告会でそう言い切った。数年後のメジャー行きを宣言している村上にとって、今回のWBCは目標だった大谷の実力を肌で感じ、野球人生において明らかなターニングポイントになった。「野球に対する考え方、トレーニングの仕方など刺激になった。見える世界が(広がった)。世界で活躍するトッププレーヤーと一緒にできてすごく良い経験になった」

大谷への意識は特別で打撃練習から見とれていた。「いや、もう全部。体の使い方、体重の乗せ方、ボールへのコンタクト。全てにおいてすごかった」。ヤクルトのチームメートにも「大谷さんはすごい」とLINE。侍ジャパンに合流するまでも、YouTubeなどで大谷の試合だけでなく打撃練習の動画まで見てモチベーションを高めていたが、ホンモノは次元が違った。

世界一で「燃え尽き症候群はなかったのか」と問われても「そんなこと言っている時点でダメです。全くない」と目指しているモノが違う。日本の“村神様”から「世界一のプレーヤー」へと続く、新たな旅路が始まった。【三須一紀】

▼村上が5度目の開幕戦出場で初の開幕アーチを放った。3冠王を獲得した翌年の開幕戦で本塁打を打ったのは86年落合(ロッテ)に次いで2人目。86年の落合は打率3割6分、50本塁打、116打点で2年連続3冠王を獲得し、プロ野球初の2年連続50本塁打を達成(落合の後に02、03年カブレラも連続50本を記録)。村上が落合のように連続3冠王と連続50本塁打をマークできるか。また、WBC出場年の開幕戦で本塁打を打った日本人選手は06、09年小笠原(日本ハム、巨人)13年本多(ソフトバンク)17年坂本勇(巨人)に次いで4人、5度目。