アレへ1勝だ。阪神がDeNAとの開幕戦(京セラドーム大阪)を白星で飾った。岡田彰布監督(65)が積極的にタクトを振って勝利をたぐり寄せた。好投を続ける青柳晃洋投手(29)を6回途中でスイッチ。前のめりの継投策でリードを守った。遊撃スタメンで起用した小幡竜平内野手(22)が3安打2打点と活躍。荒波に乗りだした岡田丸が最高の船出だ。

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5283日ぶりの勝利に12球団最年長の岡田監督はホッとした表情を見せた。3点差まで追い上げられ、最後は湯浅が1発出れば逆転の1死満塁のピンチを背負ったが、佐野、ソトを打ち取り切り抜けた。「嫌な感じがしたんよ。オレは全然昨年は関係ないんだけど。そういうシーンが頭をよぎったね」。昨年の開幕戦は7点差逆転負け。今年は湯浅が踏ん張った。

継投も思い切りがよかった。5回まで1安打無失点だった開幕投手の青柳を6回2死一、二塁で左腕岩崎にスイッチ。「まさか神里に代打出すとは思わんかったからな。オレが間違ったな。宮崎が出てくるとは思わんかった」と、想定外だったが、経験豊富な岩崎を出すことは決めていた。

攻撃でも勝利への執念の采配だった。3点リードの4回1死一、三塁から投手の青柳に初球スクイズを指令。きっちりと成功させた。3月27日に指揮官が休日返上で先発投手の練習に顔を出し、バント指導した成果だった。8回も無死二塁から代打糸原の二ゴロで三塁に進め、小幡の適時打につなげた。「まあ、ヒットの割に効率的に点取れたと思う」と、9安打6得点の白星に、ベンチで点を取る岡田野球の力を見せた。

この日、自宅を出る時に「あまり寝れんかったわ。(気持ち的に)ちょっとなあ」と、笑った。開幕の高ぶりを抑えられなかった。赤飯とタイの尾頭付きを食べ、満開の桜の下、京セラドーム大阪へ乗り込んだ。チケットは完売。満員のスタンドを何度も大歓声で酔わせた。2、3戦目もチケットは完売。虎党の熱も高まっている。

試合直前に一塁側ブルペンで行われた出陣式(球団公式YouTubeで公開)で岡田監督は「苦しい時こそみんなで1つにならなあかんと思うんで。とにかく1年間頑張っていきましょう」と選手、スタッフへ呼びかけると「あと、タッチするのにグーとかパーが入り乱れてるから、阪神はパーにしよう。ハイタッチのパー。決めておこう。それでいこう。よっしゃ、頑張っていこう」とまさかの“パー指令”で笑いを誘った。若いチームに岡田監督の勝利への執念が伝わっていけば、本気で「アレ」が見えてくる。【石橋隆雄】

▼岡田監督の阪神での勝利は、08年10月12日中日戦以来、5283日ぶり。同年は最大13差を覆され、同月10日に巨人の優勝が決定。辞任を決めていた岡田監督の最終戦でもあった。なお阪神の監督としての最長ブランク勝利は、村山実監督が88年4月14日巨人戦で挙げた5840日ぶり。前回は選手兼任として指揮を執っていたが、72年はチームが低迷し、投手に専念することを決断。金田正泰ヘッドコーチに監督を委譲した。このため同年4月18日ヤクルト戦が監督として最後の白星となっていた。