阪神のエース青柳晃洋投手(29)が、6回途中2安打1失点の好投でチームを2年ぶりの開幕白星発進に導いた。自己最速タイの149キロ直球を軸に、両サイド、高低を使い分け、4回まで完全投球。抜群の立ち上がりでチームを鼓舞し、見事に初の大役を全うした。お立ち台でファンの祝福を受け「(大歓声は)久々ですけど、最高ですね」と充実の表情を浮かべた。

岡田監督の助言を生かした。開幕前ラスト2試合は制球に苦しみ、指揮官からクイック投法が原因の1つと指摘を受けた。真意を確かめるべく、25日の練習中に指揮官に自ら歩み寄った。その際に「もっとアバウトにいっていいんじゃないか」とアドバイスを受けたことを明かし、「打たれるまでアバウトに、ストライクゾーンで勝負しようと思った。それがうまくいったと思う」と振り返った。

今オフはより強い真っすぐを求め「(左)足を地面についてから投げる」ことに重きを置いた。帝京大時代から師事する日本工学院の内田幸一トレーナー(47)は「右腕が遅れてムチのように出てくるというのが理想。分かってても打てない真っすぐを投げるためですね」と説明。昨年からウエートトレに加え、投球動作に近い形のトレーニングを組み込んだ。フォームの再現性を高めると同時に、直球の質を向上させた。

開幕投手に白星がついたのは18年メッセンジャー以来5年ぶり。日本人に限れば11年能見以来12年ぶりで、個人ではシーズン初戦4連勝だ。昨年開幕直前に新型コロナに感染した影響で立てなかった舞台で雪辱を果たし、チームに大きな「1勝」をもたらした。【古財稜明】

■「能力的には凡人なんです」

青柳が大学時代から師事する内田氏は、阪神のエース右腕を「能力的には凡人なんです」と笑う。川崎工科から帝京大を経て、ドラフト5位で阪神に入団。決してエリート街道とは言えない道を歩みながら、球界を代表する投手となった姿を見てきただけに、「その彼がたゆまぬ努力と常に昨日の自分を越えていく意識を持ってきたことで、天才たちを料理していく姿がいつも痛快です」。

内田氏は昔話の「うさぎと亀」を例に、青柳を「亀」と表した。「ヤギはとにかくあきらめない。できるまでコツコツやる。人生できるかできないかじゃなく、やるかやらないかを証明してくれる貴重な亀だと思ってます。凡人でもやり方次第でここまで行けるという姿を日本中に見てほしいです」。この日も関東から京セラドーム大阪にかけつけて、愛弟子の勇姿を見届けた。

■岩崎、牧斬りで乗り切る

岩崎がヒヤリ投球で0回1/3を1安打無失点で乗り切った。6回2死一、二塁で先発青柳から岩崎にスイッチ。代打宮崎に中前適時打を浴びたが、DeNA4番牧を内角直球で空振り三振とし、最少失点でこの回を切り抜けた。岡田監督は岩崎、湯浅らリリーフの投球について「開幕のプレッシャーとか抜きにしても、ちょっと球は高いし、甘いのはだいぶ修正しないといけないところもあるかも分からないね」と冷静に分析した。

■K・ケラー、リード死守

K・ケラーは1回2安打2失点で耐え抜いた。5点リードの8回にマウンドへ。1死二、三塁で宮崎に適時中前打を浴び、2点を失った。昨季開幕戦の大逆転負けあるだけに、球場もざわざわ。それでも、4番牧を空振り三振、5番楠本を中飛に仕留め、なんとかリードを守った。岡田監督も「パッと見たらケラーやったから。よぎるやろ」と苦笑いだった。