ある日のジャイアンツ球場でのことだった。中田翔がお昼休みにフラッと現れた。見ると短パンの下に履いていたタイツの膝はビリビリ…。直径10センチはあろうかという大きな穴が2つ。肌が剥き出しだった。変な質問だということを百も承知で恐る恐る聞いてみた。

「穴があいたタイツでも使ってらっしゃるんですね」。打席では眼光鋭い中田翔だが、目尻を下げて答えてくれた。「この生地のタイツが一番使いやすいんだよ。生地が薄いからすぐ破れて穴があいちゃう。でもこの程度でいちいち捨てるほどじゃないから」。この年の年俸は推定1億5000万円。聞くと、持っているタイツはすべて破れていて、試合でも「穴あきタイツ」で打席に立っているというから驚いた。2戦連発のこの日も履いていたか定かではない。でも豪快でありながら物を大切にする実直な人柄が垣間見えた。【巨人担当 小早川宗一郎】