阪神岡田彰布監督(65)が、執念の采配で4時間26分の死闘に終止符を打った。1番近本光司外野手(28)が延長12回2死満塁で中越えへサヨナラ打。初回にDeNAに4点を先制される苦しい展開も、投打ともに粘りを見せ、劇的勝利をつかんだ。昨年はセ・リーグワーストの開幕9連敗を喫したが、新体制で2年ぶりの開幕2連勝となった。

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打球は中堅手の頭上を越えた。地響きのような虎党の大歓声に包まれ、岡田監督は殊勲の近本を笑顔で抱きしめた。「こんなん1年間やっとったら持たんで! 体」。疲労困憊(こんぱい)の表情で思わず苦笑した。初回、DeNAに4点を先制されながらも、延長12回にサヨナラ勝ち。「初回も追いつけるというか、反撃の二塁打もあったし、ちょうどよかったんじゃないか、最後近本で」。初回に反撃ののろしを上げ、12回に試合を決めた選手会長をたたえた。

開幕戦でさえを見せた勝負勘がこの日も光った。5回に同点に追いつくと、岡田監督は死闘を想定していた。「もう12回までいく流れで考えていたので」。その延長12回も2死走者なし。ここでベンチに糸原が残っていた。10回の好機でも温存していた代打の切り札。「本当によく残したなあ、と思った」。起用に応える右前打で突破口を開いた。そして2死満塁のチャンスを近本が生かした。「最高です! (打球が)とにかく越えろとしか思ってなかった。その打席に立てたのも、本当に糸原さんの右前に感動して。僕だけじゃなく、つないでくれたみんながいたので。(監督とのハグは)もう覚えていない」。ベンチに残ったのは、K・ケラーと捕手の長坂だけ。総力を結集して勝利を呼び込んだ。

投手起用でも先発秋山が2回までに5失点と乱調だったが、5回まで投げさせた。6回からはリリーフ7人で無失点リレー。12回の起用も「点取られてないもん、富田。やっぱり(厳しい場面を)経験しないと前に進めへん」と迷わずドラフト6位左腕を投入した。指揮官は勝負の流れを読み、ナインは最後まで諦めなかった。開幕9連敗という苦い記憶はもう過去のものだ。今年の阪神はひと味もふた味も違う。【石橋隆雄】

▼阪神が総勢24人起用という総動員態勢でサヨナラ勝ちした。昨季24人以上が出場した試合は2試合しかない。5月20日巨人戦25人(2-6で敗戦)と、最終戦の10月2日ヤクルト戦26人(3-3で引き分け)。

▼阪神のシーズン2連勝発進は、矢野燿大監督時代の21年ヤクルト戦以来。このときは3戦目も勝って連勝を3まで伸ばした。なお前回の岡田監督時代には開幕3連戦で、04年巨人戦、08年横浜(現DeNA)戦と、2度の3連勝発進がある。

▼近本のサヨナラ安打はプロ初。19年7月20日ヤクルト戦で、ハフから犠飛を打ち上げたのが唯一のサヨナラ打だった。なおプロ初出場の19年3月29日、ヤクルトとの開幕戦では、延長11回の打席で石山の初球が暴投となり、サヨナラ勝ちを呼び込んだことがある。

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