セーブ王への新兵器! 阪神湯浅京己投手(23)が、メジャーリーガーも愛用する野球ギア「キネティックアーム」を今季から導入している。肩、肘の負担軽減に役立つ特殊なサポーターで、ドジャースのエースビューラーは使用を始めた21年に16勝をマーク。NPBではDeNA今永、広島九里らが愛用中だ。敵地広島戦が雨天中止となった5日も、湯浅はキャッチボール時に装着。新守護神が万全の故障対策を施し、新相棒と「アレ」に貢献する。

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故障なしでシーズン完走へ。湯浅が新たな相棒とともにキャッチボールを行った。右肘、右肩に装着したのは米国製の「キネティックアーム」と呼ばれる野球ギア。マツダスタジアム横の室内練習場の隅っこで、石井にも試着してもらった。「めっちゃいいですよ!」。23歳の明るい声がはずんだ。

どのように肩、肘を守ってくれるのか。同製品の日本総代理店「RHKトレーディング合同会社」で代表を務める滝口博之さん(ひろし=51)は「特殊な素材で投球時に肘に掛かる圧力を軽減することができる」と説明。スムーズなテークバックをアシストする効果もある。ドジャースのエース右腕、ビューラーが16勝を挙げた21年に使用して注目を高めると、DeNA今永も昨季から導入。広島九里ら約15人のNPB選手が使用している。

きっかけはWBCだった。米国との決勝の終盤。大谷の横でブルペン待機していた湯浅が、滝口さんが扱うトレーニングチューブでアップを行っていた。「腰のけがに苦しんでいた選手が活躍して、感動したんです」。野球塾も運営する滝口さんの教え子が、湯浅の聖光学院(福島)時代のチームメートという縁もあった。今季もフル回転が期待される右腕を思い、チューブとともに「キネティックアーム」をすすめた。

「自分に合うものを追い求めて、新しいものをどんどん取り入れたい」という湯浅も「おもしろそうだったので」と取り入れた。2日のDeNA戦から、キャッチボールの際に使用している。

「つけることで腕も上がりやすくなるし、肘、肩の負担も減る。つけてみて感覚が悪かったらやめていたかもしれないけど、自分が使いたい腕の使い方ができたので、継続して使おうと思いました」

侍ジャパンの投手陣と過ごし、体のケアへの意識もより一層高まっている。すでに2セーブを挙げている背番号65は、この日の雨天中止に「無駄にしないようリフレッシュしてまた頑張りたい」ときりり。セーブ王で「アレ」を導くべく、守護神に隙はない。【中野椋】

○…湯浅は“大谷ギア”も導入している。滝口さんには、エンゼルス・大谷が使用する「ショルダーチューブ」を発注。先端に重りがついた棒を振動させることで、普段は鍛えることが難しいインナーマッスルに刺激を与えられる。WBCでも登板前に使用したアップ用のチューブ「Jバンド」、「キネティックアーム」を含めた“三種の神器”でシーズンを乗り切る。滝口さんは「セーブ王を取って優勝に貢献してもらえたら。その中でパフォーマンスのお役に立てたらありがたい」とエールを送った。

▽阪神石井(キネティックアームを試着)「存在は前から知っていました。湯浅が持っているのを見て、つけさせてもらいました。肘の負担を減らすことが目的だと思います。気になっていたところなので、今後、借りて投げてみたいです」

<過去の主な練習用珍アイテム>

◆五寸くぎ 92~95年に広島の投手陣を指導した山本和行コーチ(元阪神)が発案。地面に向かって大きなくぎをかなづちで打ち付ける動作を繰り返した。手の動きを柔軟にすることが狙い。「柔らかく手首を使わないと刺さらないからね」。

◆靴下もどき 藪恵壹(阪神)は97年の春季キャンプに、リストバンドと洗濯用ネットを組み合わせた長めのストッキングを持参。腕にはめて球をリリースしても、ボールは袋部分に残ったまま。「リリースポイントや握りの確認に使えます」と重宝した。

◆やり投げ 山本由伸(オリックス)が17年オフに導入。長さ約70センチ、重さ約400グラムのプラスチック製。投球動作と共通する部分が多く、試合前の練習などで使った。「おかげでどんどん球が速くなって、体も楽になっている」と現在も愛用している。

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