日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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プロ野球のNPB(日本野球機構)をはじめ各球団が、悪質な誹謗(ひぼう)中傷に対して法的措置も辞さない構えを示している。阪神青柳、DeNAエスコバーらも被害にあったことを公表した。

日本初のスポーツ代理人で、弁護士の辻口信良(太陽法律事務所)が「ファンの態度として行きすぎだった」と語ったのは、20年に女子プロレスラーの木村花が被害にあった末に自死した事案だ。これが刑罰が変更された引き金になったという。

昨年7月、口頭や文書にかかわらず公然と個人・企業を侮辱した犯罪の『侮辱罪』(刑法231条)が改正された。軽犯罪法と同じだった「拘置または科料」に、1年以下の懲役・禁錮もしくは30万円以下の罰金刑を加えたのだ。

「被害にあった人が自殺に追い込まれ、遺族が落ち込んで社会的問題になった。ファンの態度としていかがなものかという流れで刑が見直される流れができた。また身体に危害を加える、あたかもそれが現実化するみたいなことになると、刑法では脅迫罪の範疇(はんちゅう)になる」

さらに該当する刑罰として『信用毀損(きそん)罪』がある。これは『名誉毀損(きそん)罪』『脅迫罪』と類型の犯罪で、「貧乏になって死んでしまえ!」などといって経済的な信用を害したときに適用される。

これまでピッチャーがKOされてベンチに下がる際などスタンドから「蛍の光」を合唱するケースが頻繁に見受けられた。1991年(平3)に『スポーツ問題研究会』を発足させて活動している辻口は「応援する側のモラルの問題」と観客のマナーを指摘する。

「そこはスポーツに対するリスペクトや愛情がない。ひいき筋をほめるのはいいが、失敗した相手投手を傷つける応援はNGです。本当にスポーツ好きで、我々ができないことをやってる選手に対するリスペクトとは違う」

この状況が続けば球団側もアクションを起こさざるを得なくなる。では犯罪行為と認められた場合には捜査の対象になる可能性はあるのだろうか。

「警察サイドも形式上侮辱罪に該当する場合でも、一定の程度を越えないと動かないケースのほうが多い。ただ今はSNSを利用してネット上で誹謗中傷した本人を特定できるので、警察が呼び出したり、大阪弁でいう“えげつない”、いわゆる極端であれば捜査機関も摘発に動く可能性は十分に考えられる」

また刑事責任とは別に民事上の損害賠償責任の問題にもなる。ファンの存在に支えられる人気商売とはいえ、今までのように“有名税”で片付けられない悪質は許しがたい。スポーツは観る、応援する側も含めフェアプレーの精神で成り立っている。  (敬称略)