青学大が国学院大に2連勝し、06年春以来17年ぶり13度目の優勝を果たした。初谷健心内野手(2年=関東第一)の右越え3ランなどで初回から4点を挙げると、その後も3本塁打などで15安打10得点。強打の青学大を見せつけた。投げては最速153キロ右腕、常広羽也斗投手(4年=大分舞鶴)が6回を4安打1失点。投打にかみ合い、悲願の優勝を手にした。青学大は6月5日開幕の全日本大学選手権に出場する。

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やっとつかんだ優勝に、安藤寧則監督(46)はベンチの階段をゆっくりと上った。視線の先には選手たちの歓喜の輪。「感慨深いものがありました。本当に17年ぶりなんだ、と。選手はよくこじ開けてくれた」。昨秋はあとアウト2つで逃した頂点に立ち、喜びをかみしめた。

最後まで合言葉の「1つ1つ積み重ねる」を繰り返した。5回を終わり7点リードも手を緩めない。主将の中島大輔外野手(4年=龍谷大平安)は「昨秋は国学院大に逆転優勝を許した。怖さはわかっている。攻める気持ちを持ち続けました」。6回には2者連続本塁打。9回にもダメ押しの1点と戦い抜いた。

「安藤イズム」が実を結んだ。19年1月、当時2部だったチームを再建すべく監督に就任した。青山学院高で監督を務めていた指揮官は、熱血監督として知られていたが「頭ごなしに言わない。キレない」。この2つを心に決めた。

寮で選手とともに生活し、日常にも目を向けた。1人ずつ面談し本音で語り合った。就任当時、全体練習が終わると、ほとんど自主練習をする選手はいなかったが、「変わろうとする心意気を大事にした。まずは小さい山(目標)を与えクリアする。その積み重ねです」。目的意識が芽生えた選手たちは、午後からほぼ全員がグラウンドに戻るようになり、日が暮れるまで練習した。21年春に1部昇格。そしてこの日の歓喜につながった。

選手と監督の絆は、奇跡的な巡り合わせも生んだ。この日は安藤監督の誕生日。中島は「監督の誕生日の17日で、17年ぶりの優勝。何か運命的なものがあるのかな」と笑顔を見せた。次の目標は日本一。1つ1つ積み重ね、頂点へ上り詰める。【保坂淑子】

▽国学院大・鳥山泰孝監督(15安打10得点され)「青学大の攻撃力が際立った試合。私も含め選手が臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の思いを持ついい機会。もう1度チームを強化したい」

▽河原井正雄・青学大前監督「安藤は2部だったチームをよくここまで引き上げてくれた。立派だしうれしい。感謝しかない」

▽巨人円谷英俊スカウト(青学大OB)「まずは、東都の1部の球場で母校が見られるようになり、優勝も見られた。恩師の河原井前監督の前で決めてくれたこともうれしいですね」

▽井口資仁ロッテ前監督(青学大OB)「17年ぶりの優勝をとてもうれしく思います。苦しい時代もありましたが、戦国東都を這い上がって、優勝できた経験は今後への強みになることは間違いありません。ここから青学大の黄金時代が始まることを願っています」

◆青学大野球部の主なOB 松山秀明(ソフトバンクコーチ)、奈良原浩(楽天コーチ)、小久保裕紀(ソフトバンク2軍監督)、高山健一(元西武)、中川隆治(元近鉄)、坪井智哉(元日本ハム)、井口資仁(元ロッテ)、倉野信次(元ソフトバンク)、石川雅規(ヤクルト)、円谷英俊(元巨人)、小窪哲也(広島コーチ)、杉本裕太郎(オリックス)、東條大樹(ロッテ)、渡辺雄大(阪神)、加藤匠馬(中日)、吉田正尚(レッドソックス)、岡野祐一郎(中日)

※順不同、敬称略