西武の入団テストが2日、埼玉・所沢市の球団施設で行われた。

報道陣にも公開された。室内練習場の隅で、行き来の邪魔にならないように立った。目の前を5人、10人、15人…と緊張した面持ちの受験者たちが通り過ぎていく。あいさつしてくれる受験者も何人かいる。

その中の1人が、わざわざ身をかがめて、目の前を通り過ぎた。私の視界をふさがないように。

「中学、高校とずっと礼儀は言われてきたので。親もけっこう厳しかったですね。でも、そういうことができていたら、応援される選手になれると思うので」

休憩時間に尋ねると、そんなふうに答えてくれた。彼はテストでの待機中、いろいろなところに視線をやっていた。人間観察とか、好きなのだろうか。

「好きですね。ちょっとだけ人見知りな部分もあるので、この人はこういう人なのか~とか思いながら、話し掛けることも多いです」

国内独立リーグの受験者も多く、チームメート同士は固まってウオーミングアップをしていた。彼のように単独でやって来た受験生は、1人黙々とアップし、少しずつ他の受験者と交流の輪を広げていく。

球団の人財開発チーフを務める青木智史氏(43)は「テストの選考基準になるかというと、それは別の話ですよ。でもやっぱり、あいさつとかは気にはなりますね。例えば初対面の選手たちとどうやってコミュニケーションを取っていくか、集団では大事なことですから」と話す。

振る舞いからも何となく見えるものはある。今回のテストに携わったあるスタッフに聞いた。

「あいさつが特に印象に残っているのは、うーん、3人くらいですね」

受験者の思いは人それぞれだろう。プロ野球に入りたい、埼玉西武ライオンズの仲間に入りたい-。その気持ちの大きさは、きっと、ちょっとした行動に現れる。誰も見ていないような場所で駆け足で準備へと移動している受験生は、やっぱりビブスの色と番号を覚えてしまう。

まずは実力と可能性を示してこそ、合格をもらえる厳しい世界でもある。冒頭の身をかがめた彼も「ずっとプロ野球選手になりたくて。今年が年齢的に受験できる最後の年なので。何とか実技でアピールしたいです」と、午後のテストに気持ちを高めていた。

「高校が西脇工業なんですけど、自分の同級生がプロに行ったので。(巨人の)大勢です。自分も同じ舞台に立ちたいなって」

誰にでも夢を追いたい理由がある。【金子真仁】