ついに来た! あと1勝や! 阪神が劇的勝利を飾り、3勝2敗で38年ぶり日本一へ王手をかけた。1点ビハインドの7回表はダブルエラーの間に2点目を奪われたが、8回裏に痛恨の適時失策を喫した森下翔太外野手(23)の逆転2点三塁打などで一挙6点を奪った。85年に日本一に到達した11月2日に、感動的な1勝。23年ラスト甲子園となる可能性が極めて高い一戦で、岡田阪神がいよいよ頂点まで残り1歩とした。

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森下が三塁ベース上で闘志をむき出しにした。2点ビハインドで始まった8回。1番近本の右前適時打で1点差に迫り、なおも1死二、三塁だった。カウント2-2から宇田川の152キロ低め直球を振り抜き、左中間を真っ二つ。値千金の逆転2点三塁打を決め、初対決のオリックス鉄壁投手を打ち砕いた。

「なんとか、走者を絶対かえそうと思って打席に立った。本当に食らいつきました」

大歓声に包まれながら、三塁ベースをたたいて渾身(こんしん)のガッツポーズを決めた。「集中しすぎて(歓声が)聞こえなかった」。それほど集中力を研ぎ澄ませていた。

7回の右翼守備では2死一塁から二塁中野のゴロ後逸のカバーをミス。自身も捕球に失敗する間、一塁走者の生還を許していた。

「失策をした後に、ああいうところで打席が回るのが野球。取り返したい思いしかなかった」

決勝打の打席に入る前には岡田監督からセンター方向を狙うように助言をもらっていた。指揮官にも導かれ、痛恨の適時失策を3試合連続打点で挽回。球団新人では初の日本シリーズ勝利打点も記録した。

CSファイナルステージを突破した直後、家族と入寮前以来10カ月ぶりの再会を果たした。父善文さん(55)、母ゆりさん(52)を連れ、大阪市内で焼き肉を楽しんだ。野球談議からたわいもない雑談まで…。大好物の肉を頬張りながら、家族だんらんの会話に花を咲かせた。

「初めて両親にご飯をごちそうしたんですけど、喜んでくれたかな。でも、野球での親孝行が一番です」

この日、両親は今季最後となる可能性が極めて高い甲子園ゲームに足を運んでいた。試合後は2人とも感無量。息子は最高の舞台で親孝行に成功した。

11月2日は85年、虎が日本一まで上りつめたメモリアルデーでもあった。時を経てルーキーが11・2に輝きを放ち、岡田監督も「最後に3番らしい動きだった。良すぎたよな、当たり、おーん」とニンマリだ。

チームは2連勝で38年ぶりの日本一にいよいよ王手をかけた。「あと1勝して必ず日本一になりますので、熱い応援をよろしくお願いします!」。お立ち台でルーキーが放った宣言が、甲子園にどこまでも力強く響いた。【三宅ひとみ】

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