筑後と宮崎でレベルアップの秋だ。ソフトバンクの最速160キロ右腕、杉山一樹投手(25)が3日、投手組の筑後秋季キャンプでブルペン入り。新任の倉野信次1軍投手コーチ(49)と斉藤和巳4軍監督(45)の指導を受け、「剛腕」+「精密機械」のハイブリッド化を目指す日々だ。

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剛腕杉山はもがいている。秋季キャンプのテーマは「狙ったところにボールを投げる」と至ってシンプル。1軍では通算88回1/3を投げて与四球68。1試合平均約7四球と制球に苦しんできた。球速を捨ててコントロールに重点を置いた時期もあったが、最大の武器だった最速160キロの直球は影を潜めた。この秋に求める究極は「剛腕」と「精密機械」のハイブリッドだ。

「ロスなく、どうやったら100の力を出せるか。それを狙ったところに投げられるようにしたい」

初ブルペンは90球。投球の合間には、メッツ千賀を育てた倉野1軍投手コーチから貴重な助言をもらった。

「コントロールが悪いのは(苦手の)左バッターが立ってるから、(苦手の)右バッターが立ってるから、もしかしたら左バッターのインコースが苦手とかいろんな要素がある。データを出したら分かるんじゃないか」

無我夢中に腕を振っていた杉山は「あまり考えたことがなかった」という。今キャンプは、球団が蓄積してきた個々のデータと照らし合わせた技術の向上、改善がメインテーマ。制球力を課題とする右腕にとって、目からウロコのヒントになった。

前1軍投手コーチの斉藤和巳4軍監督もブルペン投球に熱視線。捕手を座らせた状態と立たせた状態でグラブの位置が違うと指摘を受けた。授かった助言は「立ち投げの方がスムーズに動いている。ブルペンは唯一力まずに投げられる場所。だから力まなくていいんだよ」というもの。実績ある首脳陣2人からの指南は新たな発見で、制球改善への大きな気づきとなった。

6年目の来季は中継ぎに転向して勝負する。リーグ3連覇を果たしたオリックスは宇田川、山崎颯ら剛腕リリーフが投手陣を支えて頂点をつかんだ。杉山のポテンシャルは“師匠”の千賀も認めたほどで、短いイニングほど、爆発力が期待できる。杉山は「それしかないです」と目の色を変え、ハイブリッド化に全力を尽くす。【只松憲】

◆杉山一樹(すぎやま・かずき)1997年(平9)12月7日生まれ、静岡市出身。駿河総合-三菱重工広島を経て18年ドラフト2位でソフトバンク入団。21年5月11日のロッテ戦で自己最速160キロを出した。グラブには「牛一頭」「世界遺産になりたい」「男は鶏胸肉(とりむねにく)」「潰れてからが筋トレ」とユーモアな言葉を刻んできた。1軍通算は38試合で3勝5敗、2ホールド、防御率4・99。今季推定年俸は1600万円。193センチ、102キロ。右投げ右打ち。

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