侍ジャパン井端弘和監督(48)が「聞く力」と「見る力」を落とし込み、24年初陣に臨む。

「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024(6、7日=京セラドーム大阪)」で欧州代表と対戦。侍復帰を熱望した広島栗林の声に耳を傾け主力を招集した。一方で、コロナ禍により“失われた世代”の大学生4人をトップチームに選出した理由を、インタビューで惜しみなく語った。チームは4日に大阪入りし、5日に大阪府内で練習を行う。【取材・構成=栗田成芳】

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侍に2人の神様が帰ってくる。「村神様」と「守護神」。井端監督にとって初招集となる村上と栗林の2人は、ちょうど1年前、WBCをめぐり苦しんだ。栗林は腰痛を理由に1度も投げることなくチームを途中離脱。米国では、世界一のマウンドにユニホームだけが掲げられた。新体制での侍ジャパンに、カムバックを期する守護神の声は、井端監督の耳にも入ってきた。

井端監督 ありがたい。本人としてもああいう形で離脱したことを払拭したいという気持ちを感じたし、実績は十分。その熱意、絶対出たいって思ってもらえるのはすごくありがたい。間接的にも前から届いていたんで「じゃあそれに応えないといけない」と思いますし、秋(プレミア12)は抑え候補だと思ってますんで。

4番は確信を持って村上に託す。2月のキャンプでは左臀部(でんぶ)の張りの影響で一時別メニューだったが、侍合流直前の3日、中日戦でオープン戦初アーチを放ち不安を吹き飛ばした。指揮官の頭には、11月のプレミア12だけでなく、26年WBCも見据えた上で、打線のど真ん中に据えるのはこの男しかいない。

井端監督 当然4番は村上選手。一昨年の3冠王のイメージが強すぎて、昨年は苦しんだと思われているけど、苦しんでも30本打った。そういうのがまた力になり、さらにレベルアップできると思うので、今シーズン非常に楽しみ。

この2人を中心に、トップ選手がいるからこそ、就任以来抱き続けてきた妙案は実現に至った。大学生4選手を招集しプロアマの垣根を取っ払った。明大・宗山、青学大・西川、関大・金丸、愛工大・中村の4人は昨年12月、松山での大学日本代表候補合宿に足を運び、直接視察。

4月に大学4年生となる4人は、世界が初めてコロナ禍に襲われた20年当時、高校最後の夏の甲子園を事実上失われた世代だった。その苦難を乗り越えた4人が持つ「強さ」を、井端監督独自の視点で感じ取っていた。

井端監督 4人に関しては大人ですよ。甲子園がちょうどなかった世代。いろんなことを経験して大人になったのかな。だから自分を持っていると思うんです。高校3年、大学1年、2年は自主練習が多かった世代。そこで伸びてきたということは、自分にも厳しくできるからこそ、こうやって力をつけてきたんだと思う。今後も変わらずやってもらえればと思うし、高いレベルで選手を見て一緒の空気を吸うことで、彼らの今後の成長につながると思うんです。何かをつかんで帰ってほしい。

ポテンシャルをさらに引き出すため、2戦目には大学生を積極起用する。金丸が先発、中村も中継ぎで登板予定で、宗山、西川もスタメンの可能性が高い。

井端監督 次のWBCは、またメジャー組がくると思うので、その中に割って入らないといけない選手、入ってほしい選手はいっぱいいる。このユニホームを着ている以上、まずは勝ちにこだわってほしい。

選手の声に耳を傾け、選手の足跡から可能性を見いだした井端ジャパン。24年初陣が幕を開ける。