プロ18年目の阪神西勇輝投手(35)が、617日ぶりの白星を手にした。5回を4安打2失点にまとめ、24年8月21日ヤクルト戦(京セラドーム大阪)以来の今季1勝目を挙げた。

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「西、頑張れ!」。いつもは支えになる声援が、西勇はつらかった。昨年6月の2軍戦。マウンドから投じたボールが大きく抜け、捕手がジャンプしながら捕球していた。ファンのエールも、自分を心配する声に聞こえてくる。「引退間際の先輩たちがよく、昔の自分の映像を見ていたのを思い出した。こうやって終わっていくのかと…」。マイナスの感情に支配された。

昨年4月に右ひざの内側側副靱帯(じんたい)変性と診断。長年先発ローテを守ってきた“勲章”とも呼べるケガだが、影響は大きかった。6月に復帰後も状態は上がらず、1週間で700球の投げ込みを行ったこともある。今まで普通にあった「ため」が作れず、右足の感覚が戻らない。「終わったな…」。ふとそんな思いも頭をよぎった。「投げ方が分からないです」。そう周囲にもらした。シート打撃に、自身をよく知る人たちに見守られながらのブルペン投球。光を見いだそうと投げ続けた。

名古屋での2軍戦を終えた後、ふと立ち寄ったのは地元・三重。子どもの頃よく走っていた、山の上にある神社までの階段を駆け上がった。目の前には当時の自分のように、懸命に汗を流す子どもたち。純粋な姿を見て、心の中で燃える炎が戻った気がした。「プロになった時の、19歳の時の練習をしてみようと思った。昔よくやっていた打撃練習をしてみたり」。苦しみながらも、あの時、諦めなかったから今がある。【磯綾乃】