西武栗山巧外野手(43)の引退セレモニーに15分、間に合わなかった。8月30日、育成の谷口朝陽内野手(22)は茨城での3軍戦に出場後、仲間たちとバスに揺られて本拠地ベルーナドームへ一目散。「何とか間に合おうと頑張ったんですよ。神頼みとか」。わずかに届かなかった。

ずっと投手だったが内野手でドラフト指名され、一から鍛えて3年目。若き日の栗山と同じように、田辺徳雄3軍野手コーチ(60)とマンツーマンの時間が多い。「だから自然と栗山さんに質問できる機会も増えて。新品のバットも2本いただいて」。そのうちの1本は芯に当たった音の重要性を知るために練習で使うことも多く、栗山のように塗装がはげてきた。

もう1本は部屋にある。球団企画で選手たちが栗山に質問を寄せる機会があった。谷口の質問は「バットと寝たことはありますか?」で、栗山の回答は「さすがにバットと寝たことはない(笑い)」だった。ただ、そもそもなぜこんな質問をしたのだろう。

「栗山さん、あれだけ打撃の探求をされているし、バットどれくらい持ってるのかな。やっぱり欠かさず持っているのかなって。ふざけたわけじゃないんですけど、どれくらいバットに愛着や執念を持っているのか知りたくて」

そして「これ、初めて言うんですけど、実は…」と告白する。

「僕、栗山さんにバットをいただいたうちの1本、寝る前に一緒に布団に入れてるんです」

常に野球を-。通算2152安打どころか、まだ2軍でも出場1試合のみ。それでも飛距離は若獅子屈指とされる。悔しい夜もある。バットと一緒に未来を夢見る。【金子真仁】