<日本ハム3-5ソフトバンク>◇20日◇札幌ドーム

 魔球撃ちで開幕だ。ソフトバンク小久保裕紀内野手(38)が、日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)を完全攻略した。3回に「ワンシーム」を左前適時打するなど、8年ぶりに座った開幕4番で3安打2打点と大暴れ。守備でも体を張っての好プレーを演出。自身初の開幕猛打賞の主将が打って、守って、チームを開幕白星発進に導いた。

 魔球を見切った。小久保のバットが、ダルビッシュの新球をとらえた。3回表2死二塁。2点をリードして迎えた2打席目だ。初球。147キロを計測した球が内角にシュート回転しながら食い込んできた。両ひじをコンパクトにおさめながら体の回転で、はじき返した。左前タイムリー。難敵ダルビッシュ相手の序盤、リードを3点に広げる貴重な一打となった。

 小久保

 来た球を打った。それだけ。

 コメントとは裏腹に実は狙っていた。チーム挙げてのダル対策の成果だ。「ワンシーム」の球種まで見破ることはできなかったが、スコアラー陣が研究した結果、狙い球は2つの球に絞られていた。右打者に対し、シュート回転する新球が甘く入るケースがあること。もう1つはカットボールがなく、スライダーの曲がりが大きいこと。インプットされた情報を3本のヒットすべてで生かした。

 2回の第1打席はバット先っぽながら中前安打。これが2点先制の起点になった。5回の第3打席は4点目をたたき出す中越え適時二塁打。いずれも外角に逃げる変化球にきっちり食らいついた一打だった。狙った獲物は逃さない。10年以上も続ける動体視力トレが、大一番で効果を発揮した。

 小久保

 視力が落ちていない。(年齢を重ねても)落ちないことが大事なんだよ。

 チーム最年長でプロ17年目。開幕を迎える硬さもなかった。ただ、札幌ドームのセンターに掲げられるチャンピオンフラッグが、闘争心をかきたてた。チームは11年ぶり敵地で開幕を迎えた。「ビジターで開幕を迎える意味を若い選手たちがどう思うか」。19日、全体練習後にナインを集めてゲキを飛ばしていた。言葉にするからには、先頭に立つ。バットでは8年ぶり開幕4番で猛打賞。守備でも6回裏、一塁線への打球に飛び込んで好捕。杉内のもとには1人だけ3度も歩み寄った。

 小久保

 ダルから5点取るぞ、と言っていた。いい形でスタートが切れた。11年ぶりのビジター開幕で、あの大声援の中、ダルビッシュに勝った。明日、あさってに生かさないといけない。

 まだ、144試合のうち1試合が終わっただけ。勝っても2試合目へ、すぐに視線を移す。ソフトバンクには頼もしい主将がいる。

 [2010年3月21日12時9分

 紙面から]ソーシャルブックマーク