<日本ハム8-3楽天>◇7日◇札幌ドーム

 プロ3年目の怪物が完全に目を覚ました。日本ハム中田翔内野手(21)が、自身初、チームでは今季初となる3試合連続本塁打を放った。1-1の6回、楽天川井から、札幌ドームの天井に届こうかという大きな放物線を描く1発を左翼席に運んだ。打線はこの1発をきっかけに8安打を集中する打者一巡の猛攻で7得点。初本塁打から10戦7発の超ハイペースで、巻き返しに挑む昨季覇者の脅威の存在となっている。

 滞空時間の長い1発だった。同点の6回。先頭打者の中田は、低めのスライダーに、やや体勢を崩した。だが、軸はぶれていなかった。泳ぎながらボールをとらえると、打球はファウルにはならず、札幌ドームの天井近くまで放物線を描いて左翼席に届いた。

 「すごいビックリしています。2日連続でお立ち台に立てるなんて思っていなかったです。がむしゃらに振って、結果が残っている。そういう感じ」。自身初の3試合連続本塁打という結果には目を丸くした。だが、その内容は満足できるもの。「今までだったら(体が)突っ込んで終わっていたと思う。(下半身で)粘りながら打てたというのは大きい」。真っ黒に日焼けした顔をほころばせた。

 中田の1発で3万7670人の観衆は沸き、同時に打線に火が付いた。8安打を集中し一挙7得点。中田は再び回ってきた打席で中前打を放った。「あれがうれしかった。打った後の打席が大切だと思っていたので」。本塁打以上に1イニング2安打を喜んだ。

 左ひざ半月板を負傷して約3カ月間、1軍を離れた。運動が制約された病室で、野球に対する純粋な欲求が高まった。打撃フォームをVTRで確認し、一から見直した。心身のリフレッシュを終えて復帰後は打率3割7分5厘で9打点。11試合中、本塁打を放った試合は5勝1敗。連覇を狙うチームの中で、存在感は日増しに大きくなっている。

 軸足にあらかじめ体重を乗せる新打撃フォームは、右足の筋肉に負担をかける。そのため、どんなに試合が遅くなっても、入念なマッサージを受ける。「痛いくらいに強めにマッサージしてもらうと、翌日体が楽なんです」。胃が痛いはずなのに、下痢止めを飲んだり、氷点下の札幌でTシャツを着ていたころの中田ではない。明らかに変わった。

 3、4日の旭川遠征から戻った夜、寮の食堂で先輩ダルビッシュから「(ホームランを)56本打つまで認めないぞ」とくぎを刺された。この日の試合前練習でも、2人でウオーミングアップをし、アドバイスをもらった。本塁打の打席の前、2打席凡退すると主将の稲葉から「結果は関係なく、思い切っていけ」と声をかけられた。「完ぺきな本塁打。打線に火を付けてくれた」と興奮気味の梨田監督は「先輩連中も認めてきつつある」と付け加えた。

 8日は、同じく甲子園を沸かせた1学年上の楽天田中との公式戦初対戦。「プロ野球を代表する投手。勉強させてもらう意味でも、打席に立てるだけでうれしい」。大活躍にもおごらず、謙虚な言葉を並べた。【本間翼】

 [2010年8月8日8時10分

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