<日本ハム7-5ロッテ>◇18日◇東京ドーム

 怪物が“仮眠”から目を覚ました。3回無死満塁の好機。日本ハム中田翔内野手(21)が、15打席ぶりの安打となる右前適時打を放った。「どん詰まりだったけど、いいところに飛んでくれました。たかが3試合ヒットが出なかっただけで落ち込んでいたら、まだ打っていない人に悪いと思うし、そういう気持ちはなかった。打点がついたし、試合に勝ったからうれしいです」。トンネルを抜けたことではなく、チームの勝利に貢献できたことが一番だった。

 “眠りから覚める”直前、14日のソフトバンク戦が脳裏をよぎっていた。杉内を相手に無死満塁の好機で打席に入り、初球の甘い直球を簡単に見逃した。結局、最後は空振り三振。「なんであの球を打たなかったんやろ」。ベンチ、バス、ホテル…、どこにいても、後悔の念で何度も自問自答してきた。

 同じ満塁のチャンス。だからこそ、気持ちは固まっていた。「今日は初球からどんどん振っていこう。何でも振ろうという感じでした」。初球の139キロ直球系。迷いなく、たたいた。当たりは悪くても、気持ちで運んだ右前打。梨田監督も「うまく引っ張らずに打った。あそこで追加点が取れたのは大きかった」とたたえた。

 6回にダメ押しの適時二塁打を放った陽とは外食することも多く「今年はおれたちが頑張ろう」と、店内でハイタッチを交わした。ともに新人王の資格を持つ5勝の榊原とも、奮闘を誓い合い、何度も乾杯しあった。残り33試合。金子誠が故障で離脱した今、ラストスパートには、勢いのある若い力が必要になる。

 打線は12安打を集め、先制、追加点、ダメ押しと得点を積み上げた。負ければ借金生活という瀬戸際で踏みとどまった。中田の言葉が、期待を抱かせる。「今日で感覚を取り戻しつつあると思うので、気持ちを切り替えて、またイチから頑張ります」。今後に弾みのつく、大事な白星だった。【本間翼】

 [2010年8月19日11時1分

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