<巨人8-3阪神>◇21日◇東京ドーム

 泣くな秋山、次がある。阪神のドラフト4位ルーキー秋山拓巳投手(19=西条)が、プロ初登板初先発した。5回まで3-2とリードして勝利投手の権利があったが、6回に2点を奪われ、悔しい敗戦投手となった。それでも相手の4番ラミレスを連続三振に仕留めるなど、伝統の一戦で披露した堂々たる投球は、チームにとって希望の光となった。

 秋山は泣いた。三塁側ベンチ奥、次第にこらえ切れなくなった。真っ赤な目を何度もタオルでぬぐった。粘投をねぎらうナインの拍手、握手攻めに感謝しながら、悔しさを抑えきれない。ただただ、涙があふれた。

 「いつも通りを意識したけど、巨人戦で硬くなった部分もありました」。超強力巨人打線を相手に1軍初登板初先発。19歳の若虎は堂々と胸を張り、笑顔交じりで大役を全うした。186センチ、92キロの体格から緩急巧みに丁寧な投球。直球は140キロに満たなくとも、低めのコーナーを意識した。3番小笠原を3打数無安打。4番ラミレスからはフォークで2打席連続三振を奪い、こちらも3打数無安打に仕留めた。

 悔やむとすれば110球目。1点リードの6回2死一、二塁、8番脇谷に低めのカーブを右中間まで運ばれた。「もう少し低く投げないといけなかった」。痛恨の逆転2点三塁打を浴び、6回6安打4失点で降板。高卒新人が「伝統の一戦」でプロ初登板初先発するのはドラフト制導入後の阪神では初。涙は止められなかった。

 始まりも涙だった。ドラフト4位指名を受けた昨年10月29日。「1位で、上位で指名されると思っていた…」と思わず涙した。西条高では最速150キロ、打っては通算48本塁打。実績を積み上げてきただけに、悔しさがこみ上げた。翌30日、校長室に呼び出され「不用意な発言は慎みなさい」と諭された。世間にも誤解を招き、つらい経験もした。だが、ライバルたちに負けたくないという気持ちは、忘れたことがない。

 趣味は「野球観戦ですかね」と照れる。今春センバツにも3度も足を運び、内野席でこっそり趣味を堪能した。1年目から暇を見つけては兵庫・尼崎市内の鍼灸(しんきゅう)接骨院に通い、丹念に体をケアする。そんな男だから、野球では誰にも負けたくない。同期入団の中日岡田が7月に1軍登録されると「もう(同期は)みんな1軍に上がっている」と焦りも感じた。

 真弓監督は「次もかなり期待できる投球をしている。勝ちはつかなかったが、次に期待したい」と、次回の先発を確約した。「通用する部分もあったので、もし次もあればそこをうまく使えたら、と思います」と秋山。手応えはつかんだ。タオルでふき取った涙は必ず糧にする。【佐井陽介】

 [2010年8月22日10時24分

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