<ロッテ3-5オリックス>◇22日◇千葉マリン

 元祖ゴジラに並んだ。オリックスT-岡田外野手(22)がロッテ戦で2本塁打を放ち、パ・リーグ最速で30号に到達した。2回の29号同点ソロで14試合ノーアーチのトンネルを抜けると、6回には30号同点2ランで勝利に貢献。22歳での30本は96年の巨人松井秀喜(現エンゼルス)以来、14年ぶりの快挙となった。本塁打王争いでも2位ソフトバンク・オーティズに6本差をつけ、いよいよ独走状態。若きアーチストがレコードブックに名を刻み始めた。

 バットを両手で握ったまま見送った。「久々に完ぺきな当たりでしたから」。体に残る感触で白球の行き先は分かっていた。T-岡田が今季30度目のダイヤモンド1周へ、ゆっくり駆けだした。22歳ながら、立ち居振る舞いは本塁打キングそのものだ。

 ロッテ金泰均の20号2ランで勝ち越された直後の6回だった。一塁に兄貴分のカブレラを置き、ペンの内角低めの3球目を両腕をたたんですくい上げた。代名詞になったノーステップ打法からパワーで運び去った。2回の同点ソロで王手をかけ、今季6度目となる1試合2発で、開幕前に公約としていた大台に到達した。これでアーチをかけた試合は5連続マルチ本塁打となった。

 21日まで14試合本塁打なし。マルチ安打を放ち不振脱出の気配はあったが、ホテル出発前の金言で開き直れた。球場到着が15分遅れるほど熱を帯びたミーティングで、岡田監督がナインの前でこう言った。

 「トップいってるヤツに本塁打できるボールけえへん。ヒットでええんよ。ヒットを積み重ねると甘くなってくんのよ。ボール球振って自分から崩れとる。ある程度ストライク打たんとヒットにならん。あれだけパワーあるからヒットの延長に本塁打があるんよ」。

 14試合のスランプ中の打率は1割7分、22三振。口数が減り、下を向く回数が増えたが、周りは違った。正田打撃コーチに加え、カブレラも左親指のけがを押して、自分のことのように「ヘッドの出方が悪い」など身ぶり手ぶりで指導。全員が復活を待っていた。この日はボール球の空振りも、三振もゼロだった。正田コーチは「前の好調な時に戻ってきた。構え、テークバック、ボールの待ち方と。これで当分大丈夫やろ」と太鼓判を押した。

 家族も不振のキングを陰で支えた。今回の千葉遠征に出る直前の19日楽天戦(スカイマーク)は3三振とさっぱり。重い足取りで乗り込んだ愛車に好物のフルーツ大福が積まれていた。「普段は電話してもメールしても連絡が取れませんからね。あの子、疲れた時には甘いものが好きですから」。多忙に不振で“音信不通”の息子へ、合鍵を持つ母美津子さん(57)からの差し入れだった。幼少時から甘党の22歳は無言のメッセージに胸を熱くし、胃袋を満たして、元気がでた。この日の2発に感謝の気持ちを乗せ、球団の日本人では98年藤井以来の30本と球史に名を刻んでみせた。

 T砲が流れを呼び込み、ロッテ戦の連敗を6でストップ。責任感の強い和製大砲は「金子さんが(救援で)出たり、全員がこの試合にかけるものがあった」と胸をなで下ろした。クライマックスシリーズ圏まで4・5ゲーム差。あきらめない猛牛打線に頼れる男が復活した。【押谷謙爾】

 [2010年8月23日9時54分

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