<巨人6-4中日>◇24日◇東京ドーム
怒った!
走った!
中日落合博満監督(56)が宿敵巨人との直接対決で退場処分を受けた。3点差の5回1死一、二塁。バントしたチェンの一塁判定をめぐって審判に詰め寄った。抗議が5分を超えたため、遅延行為とみなされて監督通算4度目、選手時代も合わせて6度目の退場となった。チームは指揮官不在となった直後、連続適時打で同点に追いついた。8回に勝ち越されて惜敗し、首位を奪い返した巨人と2・5ゲーム差となったが、逆転優勝へかける執念がほとばしった。
落合監督が感情を爆発させた。4点を先制された直後の5回、ブランコのソロで1点を返してなお1死一、二塁の場面だった。チェンのバントはグライシンガーから一塁ベースカバー脇谷に渡ったが、この時、捕球より一瞬、早く脇谷の足がベースから離れたかのように見えた。早川一塁ベースコーチが判定に不満を示すと、次の瞬間、指揮官がベンチを飛び出した。
一直線に一塁の谷塁審めがけて走った。あわてず、走らずをモットーとする落合監督が就任7年目で最速とも言えるダッシュを見せた。グラウンドではもちろん、新幹線に乗り遅れそうな時ですら走らない。現役を引退してからは家族ですら走った姿を見たことがないという。そんな冷静沈着な指揮官のなりふり構わない姿勢を、ダッシュが物語っていた。
「だめだ!」。ものすごい形相で塁審につめ寄ると、敵地でのブーイングにさらされながらも、頑として譲らなかった。ベンチを出た時から覚悟を決めているようだった。
結局、抗議時間が規定の5分を超えたため退場を宣告された。厳しい表情でグラウンドを去った。だが、反撃はこの直後に始まった。2死二、三塁で再開されると、荒木が左翼フェンス直撃の2点タイムリー二塁打。送球間に三塁を陥れた。続く藤井も右前に運んで同点。4回まで完ぺきに封じられていたグライシンガーをKOした。荒木は「普段は抗議しない監督なんで、気合が入っているなと思った。何とか打ちたかった」と言った。まさに指揮官の執念が流れを変えた。
同点のまま、2番手清水が8回に2点を奪われて万事休す。首位を奪い返した巨人とのゲーム差は2・5に開いたが、指揮官に悲壮感はなかった。
「退場になった時点で職場放棄してるんだ。コーチに迷惑かけて、語る資格ないんだよ。まあ、2度とやるまいと思っていたけど、やっぱりやったな。そのうち、また、あるかもわかんねえじゃねえか。また、やるだろうな!」。
落合監督はいたずらっぽい笑みを浮かべて球場を出た。大事な試合での退場劇に、自責の念と照れがあったようだ。冷静なイメージがあるが、選手時代も含めてのセ・リーグ退場回数5度は“武闘派”と言われた阪神の星野SDと並び2位の多さ。この夜の鬼気迫る抗議はまさに「闘将」だった。【鈴木忠平】
[2010年8月25日10時50分
紙面から]ソーシャルブックマーク



