<阪神10-3横浜>◇1日◇甲子園

 手のつけられない状態とは、まさにこのことだ。左へ、右へ、真ん中へ。バットを振れば、簡単にHランプが灯る。阪神4番新井貴浩内野手(33)が今季2度目、自身4度目となる1試合5安打の固め打ちで、チームを勝利へ導いた。

 勝負強い。今の新井には、この言葉がピタリ当てはまる。初回。1死三塁で打席が回ってくると、内角寄りのシュートに右腕をたたみ込むようにして中前へ。技ありの一打で、先制打の鳥谷を本塁に迎え入れた。「今はケース・バイ・ケースで振れている」。試合の状況を見極め、自身の中に存在する「柔」と「剛」を使い分けができるほど、状態はいい。続く2打席目は真ん中へ入ってきたカットボールを見逃さず、左中間を破る適時二塁打とした。

 自慢のパワーも見せつけた。4回の第3打席。カウント1-1から、1打席目よりも厳しく内へ入ってきた144キロのシュートを豪快にスイング。グシャッという鈍い打球音と反比例するように、打球は左中間席へ消えた。「うまく振り抜けた。甘い球ではなかった」。自画自賛した1発は2試合連続18号2ランとなり、試合を決定づけた。

 優勝を争う8月。長期ロードを要する阪神では「我慢の月」と形容される。今年は12勝13敗と今季初の月間負け越しを喫するなど、チームは一進一退を繰り返した。ただ、新井のバットは上昇カーブを描きっぱなし。月間6本塁打、27打点は今季自己最高。打率も3割4分7厘と、重量打線の象徴とも言うべき働きを見せた。その勢いは9月に入っても衰えない。この日は2試合連続4打点で、今季の打点は94に。阪神移籍後では初となるシーズン100打点も、もう手の届くところまできた。

 三塁打が出ず、自身初のサイクル安打は逃したが、その後もきっちり2安打を重ね、最後まで全力で戦う姿勢をファンに示した。「ベンチで何も声を掛けてもらえなかったので、みんな僕に関心がないのでしょう」。新井は自虐的に笑って会見を締めようとしたが、最後に真剣なまなざしで言った。「気を緩めることなく、一つの守備、走塁、スイングを大事にやっていきたい。まだまだ大事な試合が続くから」。重量打線の4番を張る男は、ここからの1試合が持つ重要性を十分に分かっている。【石田泰隆】

 [2010年9月2日11時54分

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